原題 | Democracy’s Data |
---|---|
著者 | Dan Bouk |
ページ数 | 384 |
分野 | 歴史、社会、政治、文化 |
出版社 | MCD |
出版日 | 2022/08/23 |
ISBN | 978-0374602543 |
本文 | 国勢調査のデータの中には物語がある。表の中に縦横に整然と並ぶ整数や少数。それらは輝かんばかりの厳密性と客観性のオーラに彩られている。さて、そのデータが私たちに与えるイメージの枠を広げてみよう。例えばデータのもとになる情報の収集に使われるフォームがある。誰かがどこかで質問項目を決め、ありそうな回答を想定し、受け入れられる返答を限定したりしてフォームを作り上げていく。それを調査員が各家庭の玄関に持っていき、一言では言い表せない生活の実態を苦心してきちんと整った直線の枠の中になんとか押し込める。作り出されたフォームとそこに記入されたものすべてが、数字裏側にあるデータである。 本書はデータの中の物語を見つけ出そうと、数字だけでなくそれを生み出した過程にも焦点を当てようとしている。その物語を読めばそれぞれ一連の数字を獲得するための道筋を見ることができるし、その数字がもっと意義深い豊富なデータの集まり、すなわち世の中や生き様や社会を知るためのツールによって生み出されたものであることが理解できるだろう。さらに国勢調査は民主主義と密接に絡み合っている。調査から生み出される大量の数字は政治にかかわる人々の代弁をし、政治的な意見を形作る。何が問題で数字がどう使われるかということに人々がきちんと意見を言えれば国勢調査にはあふれんばかりの政治力が潜んでいる。 ここでは近年機密扱いが解けた1940年の国勢調査を通じてアメリカの歴史に切り込んでいる。出生率、住宅事情、収入、購買力、生活水準など、当時のアメリカ社会の姿をあぶりだすだけでなく、ニューディール期の社会プログラムがどのように生み出されたか、世界大戦の始まりとともに兵役につくべき多くの市民に対する武器としていかに利用されたか、という点にまで議論は及ぶ。数字の裏に隠されたものを読み取るすべだけではなく、今日の代議制とアイデンティティと政治との関係性についての新しい見方を示している。 |