原題 | MINDING THE CLIMATE |
---|---|
著者 | Ann-Christine Duhaime |
ページ数 | 336 |
分野 | 環境/脳神経外科学 |
出版社 | Harvard University Press |
出版日 | 2022/10/18 |
ISBN | 978-0674247727 |
本文 | 人間の脳は、消費者として一時的な楽しみを優先させる傾向があるために、気候変動問題はなかなか解決しない。しかし、脳の驚くべき柔軟な力によって長期的な生存を優先し、解決することもできる。その方法について脳神経外科学を専門とする著者が詳しく説明する。 気候変動が緊急の問題であるという声は、政治やメディア、一般の人たちの間で、ますます大きくなっている。しかし、切迫感はあっても本気の救済策へと立ち向かう様子はない。気候危機が現実のものであると信じているなら、なぜ自分たちの行動や消費傾向を変えるのが難しいのだろうか。 意思決定をする脳を科学的に分析すると、この問題の解決法が見えてくる。われわれの祖先は今よりも物質的に豊かでない時代を生きのびた。当然ながら、脳は長期的かつ不確実な結果よりも、短期的な生存を優先して周囲に適応することを選んできた。ある行動がすぐに有益だと認識されない場合、人間は実行しない。人間が認識した最善の利益でさえ、脳内報酬系が妨害することもある。物質的に豊かになり、早急な問題もないような時代になり、人類の行動様式が、環境問題のような解決するために時間を要する危機に対応できていない。ゆえに脱炭素を主張しながらも、消費者として短期的な満足に甘んじ、温暖化による災害がますます深刻になるような行動をしている。 幸いなことに、人間は自分の脳や他の人の脳をうまく動かすことで行動を変えることができる。本書は、脳神経回路に対して新しい報酬を受け入れるための方法を具体的に説明している。消費者としての役割であろうと、職場であろうと、指導的立場であろうと、気候変動を緩和するためには、個々人の小さな、しかしながら漸進的な一歩が必要だ。 脳の適応能力を信じて、脳とうまく付き合えば、自分たちの行動をコントロールできる上、未来は明るくなるはずだと著者は主張する。 |