原題 | The Hidden Half |
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著者 | Michael Blastland |
ページ数 | 304 |
分野 | 科学、ノンフィクション、経済、心理、社会 |
出版社 | Atlantic PBS |
出版日 | 2019/04/04 |
ISBN | 978-1786497772 |
本文 | ボクシングの元世界チャンピオン、マイク・タイソンはその圧倒的な強さもさることながら、常軌を逸した行動でも有名だった。それを彼の悲惨な家庭環境や成育歴に帰する向きもあるが、兄のロドニーは同じような境遇で育ちながら、今ではロサンジェルスの病院で外科医をしているという。誰もが思う。この違いはいったい何から生じるのだろうか。 人間を決めるのは遺伝子なのか環境なのか?逆にこの二つの要因が同程度の影響力を発するなら、同じ結果が得られるのだろうか?では、双子の場合は?結合体双生児(体が結合している双生児)の場合は?さらにいえば、同じ人間の半身に起きたことーー例えば乳がんなどーーは、反対側の体にも起きるのだろうか? こうした考察から筆者は、遺伝子と環境以外の未知の要素があることを導き出す。それが本書のタイトル、「隠れた部分(Hidden Half)」である。われわれは今持っている知識で物事を理解しよう、判断しようとしてしまいがちだが、実はそれだけでは説明がつかないことのほうが多い。過去の経験から得た知見や見識、方法、情報、統計などは知の引き出しとして新たなテーマを解説する強力な手段になりうると誰もが信じて疑わないのだが、その期待は裏切られることが多い。そこには必ず別の何かが潜んでおり、それを突き止めることが大事であると筆者は主張する。 また、われわれはつい物事を一般化、普遍化し、それを個々の事象に当てはめようとするが、必ずしもそれがうまくいくとは限らない。むしろ個のレベル、あるいは小さいグループレベルでの観察や分析が解決につながることが多い。往々にしてそれは結果的に一般化された概念とは逆の結論になることもある。さらに確率というアイテムがいかにあやふやかということが病気の死亡率を例にとって示されている。さらに、政治、経済、医学など大事な決断を迫られる場面で、われわれがとるべきステップを紹介している。非常に示唆に富む一冊である。 |