原題 | Sub Culture |
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著者 | John Medhurst |
ページ数 | 256 |
分野 | 軍事、社会、歴史、文化 |
出版社 | Reaktion Books |
出版日 | 2022/08/29 |
ISBN | 978-1789146370 |
本文 | 人が水面下を船に乗って探索する。その考えは古くからあり、紀元前332年にはアレクサンダー大王がガラス製の球体に乗ってエーゲ海に潜航し、水中の様子を観察したと言われている。その後、レオナルド・ダ・ヴィンチを始め、潜水艦のアイデアをスケッチに残した人は少なからずいる。しかしどれも当時の常識からすれば荒唐無稽な話であった。 潜水艦と言えば戦争に使われるものというイメージが強いが、実際に戦闘に使われたのは1776年、アメリカのデヴィッド・ブッシュネルが作ったタートル号が初めてである。さらに実用的な潜水艇として一般に認められているのがノーチラス号で1801年に7.6メートルの深さに1時間滞在することに成功した。ドイツの潜水艦として知られる「Uボート」は両大戦を通じて、イギリスを悩ませた。 潜水艦には芸術家の創作魂をくすぐるものがあるようだ。海底探検の古典ともいうべきジュール・ベルヌの『海底2万マイル』は今でも読者をハラハラさせるし、『レッドオクトバー号を追え』のように潜水艦を舞台にしてベストセラーになった小説もある。映画でも戦時中の戦意高揚映画から、戦後の英雄や友情を称えるものまで、ストーリーに潜水艦を扱ったものは多い。 現実の世界では潜水艦も軍事力の一部であり、その規模が各国の力に反映される。核を保有しているかどうか、大陸弾道ミサイルを何発持っているかということとともに、潜水艦の保有台数が政治的な勢力図を決定するのに一役買っている。したがって軍縮会議では潜水艦も必ず俎上に上ったし、大戦後の米ソの冷戦期には原子力潜水艦の数や性能が喫緊の課題であった。 しかし潜水艦自体は普段は水中に潜み、あまり姿を見せることはない。戦車や飛行機のようにその雄姿を見る機会はあまりにも少ない。そんな隠れた兵器の実態と、それを取り巻く様々なよもやま話を豊富な図や写真と合わせて、筆者はわかりやすく、楽しく伝えてくれる。読者を、普段知る機会の少ない水中の世界・潜水艦の世界へ誘ってくれる一冊だ。 |