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原題 GAYME CHANGER
著者 Jens Schadendorf
ページ数 336
分野 経済/ビジネス
出版社 LID Publishing
出版日 2021/04/27
ISBN 978-1912555956
本文  日本のスーパーマーケットでもよく見かけるバリラ製パスタ。バリラ社は1877年創業、イタリア最大手の老舗食品メーカーだ。主力商品のパスタは120種類以上にもおよび、その品質の良さから世界各国の一流ホテルやレストランでも採用されている。ところが、そんな国際的な優良企業が突如として窮地におちいる。
 2013年、バリラ社のグイド・バリラ会長はラジオ番組のインタビューでこう述べた。「バリラのCMに同性愛者の家族は出演させない。気に入らなければ、他社のパスタを食べればいい」彼の発言は大きな波紋を呼び、同社製品の不買運動へと発展した。多くの販売店舗がバリラ製品を撤去する騒ぎとなった。
 事態を重く見た同社は問題となった発言について謝罪し、様々な組織改革にも着手した。LGBT+(性的マイノリティ)の活動家をコンサルタントに招へいし、多様性とインクルージョン(包含)を推進する委員会も社内に設置した。LGBT+を支援する非営利団体への寄付も表明している。
 伝統的な家族像を重んじる保守的な思想や宗教観の下、これまでLGBT+の人々はさまざまな差別と迫害を受けてきた。しかし昨今、その状況は大きく変わり、LGBT+の人々は今や多様性のシンボルとなり、彼らが世界経済におよぼす影響は非常に大きいと著者はいう。本書ではさまざまな分野で活躍するLGBT+の人々を紹介しながら、彼らを実業界における優れた人材・パートナーとして受け入れるべき重要性や意義について説明していく。
 LGBT+の人々が歩んだ歴史は、女性や障がい者、高齢者や外国人にかかわる労働問題にも通じる部分がある。異なる価値観や特性を持つ人々がそれぞれの持ち味を発揮する。そんな多様性に富んだ組織や社会を実現するにはどうすべきか? 本書はそうした課題についても考えさせられる一冊だ。