ブックレビュー ブックレビュー

原題 Surf & Stay
著者 Veerle Helsen
ページ数 256
分野 スポーツ、旅行
出版社 Lannoo Publishers
出版日 2021/09/01
ISBN 978-9401476669
本文  目を閉じて、想像してみよう。どこかの砂浜にキャンピングカーが止まっている。その向こうに広がる海。スピーカーから流れる陽気な音楽。キャンバスの屋根の下には椅子がいくつか並んでいる。テーブルの上には出来立ての魚料理とグラスに入ったワイン。海のリズムに合わせて、波、変化するその形、海の詞を味わうサーフィン人生。本書はその世界への手引きをしてくれる。

 同名のタイトルを持つ前著では、古いキャンピングカーに乗って一人で旅したスペインやポルトガルのサーフ・スポットを披露した著者が、今度はさらにヨーロッパの7か所のとっておきの情報を提供している。よく知られているビーチ、知る人ぞ知るビーチ、自らサーフィンもたしなむシェフたちが経営するビーチ・レストラン、キャンピング情報、素敵なブティックやホテル、焼き立てのペイストリーが手に入るベーカリー、さらに景色が美しい、ドライビングルートなど。各地の写真家や筆者自身が撮影した写真の数々が旅情を大いに掻き立てる。

 例えばイングランド南部のコーンウォール州では、電気も水道もない森の中の宿泊施設や、ハーブガーデンに囲まれた、まるで軍隊の配給所のような造りのレストランが紹介されている。空中に浮かぶ部屋からは海の眺望が楽しめるし、サーファーが経営するレストランでは美味しくて健康的な料理をお手軽な値段で味わうことができる。コーニッシュ・ゴースと呼ばれるハリエニシダの花はこの地域のシンボルであり、一年を通じて見られるが、特に春の最盛期にはあたりを一面の黄色に染め上げる。ポースレーヴェンやリトル・フィストラルをはじめとして、サーファーを魅了してやまないビーチの数々。そしてサーフィンを人生の伴侶としながら、海を題材とした作品を生み出す地元の芸術家へのインタビュー。

 本書は単なるサーフィン専門のガイドブックにとどまらない。それぞれの地域や人々にまで踏み込んだ内容である。地元のサーファーやシェフやカメラマンがインタビューで語る言葉は、地域への愛に満ちており興味深い。海好き、旅好きな読者にはもちろん、ライフスタイルブックとしても楽しめる一冊だ。