原題 | Toxic Legacy |
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著者 | Stephanie Seneff |
ページ数 | 272 |
分野 | 環境・化学 |
出版社 | Chelsea Green Publishing |
出版日 | 2021/07/01 |
ISBN | 978-1603589291 |
本文 | その自然豊かな町は、人間と動物、植物が調和のもとに共生する理想の楽園だった。ところが、そんな町に突如として異変が起きる。 その白い粉はどこからともなく町へと舞いおりてきた。ヒナ鳥が卵からふ化しなくなった。子豚はいつまでたっても大きく育たない。鳥のさえずりや動物の鳴き声も聞こえてこない。その白い悪魔はとうとう人間にも襲いかかってきた。そして町全体は完全な沈黙へと包まれていった。 アメリカの海洋生物学者レイチェル・カーソン著のベストセラー『沈黙の春』は、謎の災厄にみまわれた架空の町の物語からはじまる。この書籍の中で、カーソンは主としてDDTについて言及している。DDTは1940年代から50年代、除草剤や殺虫剤として広く使用された有機塩素系の薬剤だ。第二次世界大戦中には、戦地でのマラリア予防の目的で米軍も大量に使用している。しかしDDTの有害性にいち早く気づいたカーソンは、その使用が人体や生態系に深刻な悪影響を及ぼすと警鐘を鳴らしたのだ。 1962年、出版されたばかりの『沈黙の春』を手にとる一人の少女がいた。少女の名はステファニー・セネフ。若かりし頃の著者本人だ。本書はカーソンから強く影響を受けた女性科学者が書いた第二の『沈黙の春』だ。除草剤として長らく使用されてきたグリホサートの危険性やその使用を禁止すべき理由について科学的に解説していく。 『沈黙の春』の刊行から60年。人類はいまだ農薬問題解決の根本策を見いだしていない。さらに、こうした問題はToxic Legacy(有毒な遺産)として、未来の世代へと先送りされようとしている。 現代のレイチェル・カーソンは、本書を通じて何を訴えようとしているのだろうか。 |