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原題 Rebugging the Planet
著者 Vicki Hird
ページ数 224
分野 生物・環境
出版社 Chelsea Green Publishing
出版日 2021/09/23
ISBN 978-1645020189
本文  この地球上に生息する哺乳類はおよそ6000種、鳥類はおよそ9000種だが、昆虫類はなんと100万種以上も存在する。昆虫は種の数や多様性において他の追随をゆるさないのだ。
 ところが今、そんな地球の支配者とも言える生物種が生存の危機にさらされている。全昆虫の約40%に個体数減少の傾向が見られ、約30%が絶滅の危機に瀕しているというのだ。豪シドニー大学のフランシスコ・サンチェス=バヨ博士は、森林伐採などで生息地を奪われたこと、農薬などの化学物質による汚染、侵略種や病原菌、気候変動などをその主な要因としてあげている。昆虫類の種が絶滅するペースは、哺乳類、鳥類、爬虫類に比べ、およそ8倍もはやい。もしこのままでいけば、100年後には全昆虫種が絶滅すると専門家は危惧している。
 人類が昆虫から受ける恩恵は計り知れない。昆虫は人間のみならず他の生物の食糧源となり、農作物の花粉を媒介し、厄介者の害虫を駆除し、土壌が栄養成分を保持できるようにし、その数は枚挙に暇がない。昆虫類の減少は地球の生態系と人類の生存にも関わる非常事態なのだ。
 害虫管理学の修士号まで取得し、英国王立昆虫学会会員でもある著者の昆虫愛は本物だ。本書は昆虫に魅せられた著者が、昆虫を取り巻く状況を解説しながら、企業や行政を巻き込んだ取り組みから個人でもできる昆虫にやさしい暮らしまで、昆虫類を救うためにできることを紹介していく。本書を読めば昆虫類が人類にとって、地球上で共存共栄すべき、かけがえのないパートナーであることを確認できるだろう。