原題 | REWIRED |
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著者 | Carl D. Marci MD |
ページ数 | 272 |
分野 | 心理、社会問題、テクノロジー、生物、ビジネス、生活 |
出版社 | Harvard University Press |
出版日 | 2022/05/19 |
ISBN | 978-0674983663 |
本文 | 私たちが住んでいる世界は常にオン、いつもみんながつながっている。しかしますます切り離されているようにも感じてしまう。なぜだろうか?答えは脳にある。スマートフォンやソーシャルメディアの使い過ぎにより脳が再構築された結果、大変なものを失っている。私たちを支え心の平安を守ってくれている結びつきがないがしろにされて、より弱く儚いつながりになってしまっているのだ。 脳が再構築されるとはどういうことか。行動が変化すると脳も変化するということだ。脳の中で最も精巧で複雑な領域、前頭前野はスマートフォンをはじめとする新しいテクノロジーによってもたらされる行動の変化の影響を最も受けやすい。人間関係の形成や健康、学校や仕事での成功のカギとなる部分であるが、この働きがうまく機能しないと悪習や中毒へのリスクが高まり、健全な判断、決定を下す能力の低下につながる。 例えばテレビを見ながら出演者の情報をスマホで検索したことがあるだろう。また、パソコンでレポートを作成している最中に届いたメールに目を通し返信したことも。このようなメディア・マルチタスキングに没頭するという習慣に我々はどっぷりとつかっている。ところがこれはいろいろな仕事をいっぺんにこなし、あたかも頑張っているかのような錯覚に陥っているだけで、実はスピードや効率が落ち、生産性は低くなっていることが多くの実験結果をもとに示されている。しかも肉体的、社会的、精神的にも健康に深刻な悪影響も及ぼしているのだ。 昨今、多くの保護者たちは、この便利で役に立つが弊害も多いデジタル機器をどのタイミングで自分の子どもたちに与えたらよいか、常に頭を悩ませている。本書では、幼児期をはじめとした、各発達段階に特有な前頭前野に対する影響を研究する筆者が、現在の科学的知見に基づき、読者にアドバイスを示す。さらにテクノロジーと健康のバランスを取り、健全に社会との繋がり・絆を保ちたい人たちのために10の提言をする。 利点も難点も多く抱えながら、スマートフォンをはじめとするデジタルデバイスはすっかり社会に定着した。筆者は、ますます急速に進化するモバイルテクノロジーに対し、社会が後手に回ることなく、先回りしてアプローチする方法を確立必要があると警告している。 |