原題 | The Brutish Museums |
---|---|
著者 | Dan Hicks |
ページ数 | 368 |
分野 | 歴史、考古学 |
出版社 | Pluto Press |
出版日 | 2021/10/20 |
ISBN | 978-0745346229 |
本文 | ベニン王国は、かつてナイジェリアの南部に存在したアフリカの王国である。(現在のベナン共和国との地理的、歴史的なつながりはない。)1800年代後半の英国では、植民地貿易が大きく拡大し、その支配はアフリカにまでおよんでいた。当時、ベニン王国に派遣された使節団が殺害されたことを受け、英国は1897年、報復として同国に武力行使を行い、ベニン王国では多数の人々が犠牲になった。その際、彫刻や装飾品などの文化財が英国へと大量に持ち出された。その数は3000点を超えるとも言われている。後に、それらはオークションにかけられ、欧州のみならず世界各地の美術館や博物館が所有することになった。 こうした略奪行為が横行したのは、もちろんベニン王国だけではない。現在アフリカ各国では、植民地支配の下、欧州列強が略奪した文化財の返還を求める声が高まっている。日本も韓国との間に文化財返還問題を抱えており、こうした事態は他人事ではない。 本書では英オックスフォード大学の考古学者である著者が、英国を中心とした欧州各国が行った歴史的遺物の略奪行為に目を向け、植民地主義時代の暗部に切り込みながら、そうした文化財の返還を促すため働きかけている。 巻末には、現在ベニンの文化財を保有していると思われる施設の名前が公表されている。残念なことに、日本国内にも大阪府吹田市にある国立民族学博物館が名を連ねている。所有数が最も多い大英博物館は本書のタイトルで「The Brutish Museums(野蛮な博物館)」の一つとして皮肉られている。 本作刊行にあたり、著者は右翼団体からの反発を懸念していたが、本書は賛否両論渦巻き、物議を醸している。 欧州列強の帝国主義が生んだ負の遺産の清算を試みる一冊である。 |