原題 | The Master |
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著者 | Christopher Clarey |
ページ数 | 432 |
分野 | スポーツ、伝記 |
出版社 | Twelve |
出版日 | 2021/08/24 |
ISBN | 978-1538719268 |
本文 | ロジャー・フェデラーの伝記を扱った本はこれが初めてではないが、本書のように彼の人となりを始め、サポートチーム、さらにはこの競技でもっとも傑出した人物たち、例えばラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチ、アンディ・ロディックといったライバルたちにまで踏み込んで書かれたものは今までなかった。ニューヨークタイムズ紙の記者である筆者がフェデラー本人や彼と親しい人たちから聞き取った男子テニス界最高のプレーヤーの物語である。 スイス人の父と南アフリカ人の母の間に生を受けたフェデラーは小さいころから運動に親しみ、中でもサッカーとテニスに惹かれていった。両親、特に母の薫陶を得てテニスの道を進むことになった彼は地元のテニスクラブに入会、やがてめきめきと頭角を現すことになる。このころ彼のコーチになったピーター・カーターは彼のとびぬけた才能に目を見張るとともに気性の激しさが最大の欠点であることを見抜いた。フェデラー自身はもちろんのこと、フィットネスコーチのピエール・パガニーニもプロに転向したときのコーチ、ピーター・ラングレンもその点が悩みの種だった。ちなみにラングレンは最初の練習で不真面目だったフェデラーをたたき出したが、彼のフォアハンドの素晴らしさは認めていた。 16歳で初のポイントを得てATPランキングの803位でデビュー。いよいよ彼の旅のスタートだ。この時同順位にほかにも若いプレーヤーが3人いたが250位以内に食い込んだ者は誰もいなかった。 フェデラーがプロの道に入って以来ずっと彼を追い続けてきた筆者は、彼がトップの地位に上りつめた後、他のどのスポーツライターよりも多く、独占的にインタビューを行ってきた。フェデラーの長く濃密なキャリアの中で軸になる人物や場所や瞬間を中心に物語は進行する。そして2019年ウィンブルドン決勝での宿敵ジョコビッチとの激闘とビル・ゲイツが主宰するアフリカでの慈善活動への協力を描いて本書は閉じられる。すでに40歳になりけがを抱えた彼の今後の生き方を暗示するような最後である。 |