ブックレビュー
| 原題 | Lifting Heavy Things |
|---|---|
| 著者 | Laura Khoudari (Author), Licia Sky (Foreword) |
| ページ数 | 216 |
| 分野 | 心理学・自己啓発・健康法・スポーツ |
| 出版社 | Life Tree Media |
| 出版日 | 2021/05/25 |
| ISBN | 978-1928055778 |
| 本文 | 本書はトラウマ治療のために、筋力トレーニングを提案する。様々なトレーニングを通して、身体的・精神的な強さを得る手助けをしてくれる一冊。実践的なトレーニングのアドバイスに神経科学的視点を織り交ぜながらも、著者自身の抱えた悩みや克服体験を赤裸々につづっており、非常に親しみやすい文体である。 これまでメンタルヘルスの向上には、ヨガのような動作の緩やかな運動がよしとされてきたが、本書はこれに異を唱えている。さらに著者は、トレーナー・参加者ともに男性中心ともいえる筋力トレーニングを、女性も進んで取り入れるべきではないかと問いかけている。以上の点で、数あるメンタルヘルス本の中でも新しい内容だと言える。 トラウマ治療に筋力トレーニングと言うと乱暴に聞こえる人もいるかもしれないが、著者自身の経験を丁寧に綴ることで、心理的な問題を抱えた読者に優しく寄り添っている。例えば、＃MeToo運動で女性たちが次々に自身のトラウマを告白したことを例に挙げ、「自分の中でうまく消化できていないトラウマや傷ついた経験を無理に話す必要はない」と、SNS時代に生きる読者にアドバイスしたうえで、章末尾の「実践」のセクションで「トラウマ告白によるダメージ」から身を守る方法を具体的に上げている。そのほか、コロナ禍のストレスにも目を向けている。 このように本書には章ごとに「実践」のセクションが設けられており、読者の「参加型」となっているのが最大の特徴である。どれも10分程度の簡単なものでチャレンジしやすい。上記のような、自分の心と向き合う「心理的トレーニング」に加え、スクワットやボールを使ったエクササイズなど、セクションごとに様々なトレーニングが取り入れられて、飽きが来ない。 作者の砕けた語りとセクションごとの実践トレーニングで、ニューヨークで作者のワークショップに参加しているような気持ちになれる、前向きな一冊。 |
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