ブックレビュー
| 原題 | The Secret Lives of the Elements |
|---|---|
| 著者 | Kathryn Harkup |
| ページ数 | 224 |
| 分野 | 化学 |
| 出版社 | Mobius |
| 出版日 | 2022/03/22 |
| ISBN | 978-1529412741 |
| 本文 | 古代ギリシアの哲学者デモクリトスは、万物の根源をなす最小の構成要素はアトモスであると説いた。アトモスとは「分割できないもの」を意味し、英語のatom（原子）の語源ともなった言葉である。彼の説はプラトンやアリストテレスから激しい批判を受け、当時は広く普及しなかったものの、近代原子論とも通底する重要な概念を含んでいた。 デモクリトスの時代から二千年以上を経た18世紀後半以降、科学技術の大きな発展とともに、物質を構成する新たな元素の発見が相ついだ。その結果、当時の化学者の間ではそれまでに発見された元素の分類や体系化が大きな関心を呼んでいた。物質の燃焼とは酸素との結合であると提唱し、近代化学の父と称されるフランスの化学者アントワーヌ・ラヴォアジエは、33の元素を一覧表にまとめた。それから100年以上経ったロシアでは、ペテルブルク大学教授だったドミトリ・メンデレーエフが、現代でも使用される元素周期表の原型を作成している。ちなみに周期表の101番元素、メンデレビウムはメンデレーエフの名に由来する。 本書の目的は単に元素周期表の概要説明に終始することではない。自身も化学者である著者によると、人間がそれぞれ異なる能力や適性を持つように、元素にも様々な性格や個性があり、一つ一つの元素にはそれにまつわるユニークな物語が存在するという。本書では52種類の元素の特徴を一匹オオカミや変わり者など人間になぞらえながら、その裏側にあるエピソードをわかりやすくコンパクトにまとめている。また原子が陽子や電子、中性子から構成されているなどの化学の基礎知識が平易な表現で随所に織り込まれている。本書はそれぞれの元素が持つ興味深いストーリーを楽しみながら、基礎知識を習得できる優れた化学の入門書でもある。 |
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