原題 | GLOVES |
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著者 | Anne Green |
ページ数 | 240 |
分野 | ファッション・歴史・工芸・文学 |
出版社 | Reaktion Books |
出版日 | 2021/11/15 |
ISBN | 978-1789144581 |
本文 | 私たちの身の回りには、様々な用途に合わせた、様々な素材で作られた手袋が存在している。防寒のための毛糸の手袋やミトン。作業中の手を守るためのゴム手袋や綿の軍手。野球のグローブやミット。そのほか各種スポーツ用に手を保護するための手袋がある。また、COVID-19の蔓延する現在では、医療用の薄いゴムやビニールの使い捨て手袋が大量に消費されている。果ては、指先にプラスティックのかぎ爪のついたガーデニング用、食器を洗うためのシリコン製の手袋まである。本書では、そうした実用的な手袋の紹介ばかりではなく、手袋を着用するとその人には、人間性や名誉、地位や権力、アイデンティティなどが付与されることを示している。また、手袋は良いことばかりではなく、退廃や詐欺、魔術等を連想させることもある。 手袋の起源はよくわかっていない。おそらく、木の葉などで手を保護していたのが始まりだろう。紀元前14世紀の古代エジプトの墓から大人用と子供用の手袋が発見されている。複雑な動きをする5本の指にフィットする手袋を作るのは、手間と高い技術が必要で、ファッションとしての手袋は地位の高い人のためのものだった。中世では、女性用も男性用も繊細な刺繍が施され、宝石が縫い込まれたきらびやかな手袋を貴族たちは着用していた。 上流社会のマナーとして、女性は人前で手袋をしなければならない時代が長かった。しかし、14世紀のフィレンツェでは、売春婦が手袋の着用を義務付けられていた。19世紀には生産技術が発達し、一般の人も買えるようになるとファッションとして大流行した。この頃の手袋生産の様子はビクトリア朝の小説にも登場している。有毒な染料や危険なプレス機の使用など、職場環境は劣悪だった。この頃多数出版されたマナーブックには、手袋に関するエチケットが詳細に記載されている。20世紀半ばころには、ファッションとしての手袋の人気は下火になった。 繊細な刺繍や装飾がふんだんに施された古い手袋、文学作品や童話の挿絵などの美しい写真や画像が数多く掲載され、眺めるだけでも楽しめる一冊となっている。 |