原題 | FAKE HISTORY |
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著者 | Otto English |
ページ数 | 320 |
分野 | 政治、歴史 |
出版社 | Welbeck Publishing Group |
出版日 | 2021/06/10 |
ISBN | 978-1787396395 |
本文 | 「奴隷解放の父」リンカーンは、平等主義者ではなかった。ウィンストン・チャーチルは、イギリスが自慢できるような首相ではなかった。教科書で習ったような出来事や人物のイメージが、本書では次々と覆される。そうした10編の歴史上のフェイク(虚偽)について、時代背景を探りながら、「強者」たちがいかに自分たちの都合の良いように歴史を作り、語ってきたかをえぐり出す。 例えば、「人はみな平等に創られている」と訴え、黒人奴隷の解放を宣言したリンカーン大統領だが、ほかの発言を調べると、「黒人が白人と同じ社会的地位を持つべきではない」と演説し、黒人の参政権や白人との人種間結婚に反対していた。奴隷制度は道義的には廃止すべきと考えていたが、解放奴隷をアフリカへ「送還」することも支持していた。しかし、アメリカでよく読まれている歴史本には、縮こまる奴隷の横で父親のように立つリンカーンの姿が描かれ、奴隷制の廃止は白人が黒人へ与えた「贈り物」のように伝えられてきた。他にも、コロンブスは地球が丸いことを証明するために航海してはいないこと、「カレー」はイギリス人が勝手に名付けた料理名であることなどを明らかにする。 歴史は、当事者たちのさまざまな意図が絡み合い、実際は私たちが習うよりもっと複雑で、時には伝えられているほど美談ではないことも多い。しかし、事実を知り理解するのは面倒だし、何より面白くない。そうやって、「支配層」つまり白人男性のために白人男性が伝える、白人男性が活躍する歴史がまかり通ってきた、と筆者は断言する(筆者は白人男性)。それが、美化された過去の栄光を取り戻そうと訴えるポピュリズムにもつながっているという。「それは本当なのか?」「その話で誰が得をするのか?」と疑うこと、そして知識を持つことで対抗しなければならない。栄光の日は過去になく、私たちが将来に作りだすものだ、と筆者は訴える。 |