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原題 The Ecological Gardener
著者 Matt Rees-Warren
ページ数 224
分野 自然・環境・ガーデニング
出版社 Chelsea Green Publishing
出版日 2021/04/29
ISBN 978-1645020073
本文  地球温暖化、プラスチックごみ、森林破壊、水質汚染…。環境問題は多岐にわたり、予断を許さない。国レベルでも世界規模でも官民を挙げた取り組みが展開されているが、もっと小さな、身近な所でも取り組めることはたくさんあるだろう。本書はその一つとしてエコロジカル・ガーデンの作り方について紹介している。

 庭園をどうやって作り上げるか、あれこれ論じるぐらいでは今の環境危機を緩和するのにどの程度役に立つのかはなはだ心もとなく思えるかもしれないが、実はとても大事なことであり、本質的な違いを生み出せる力を持っている。

 そもそも庭園は自然の一空間であり、天然の肺でもある。一つ一つが個性的で地域の、いやもっと広い範囲の生態系にとって重要な役割を果たしている。将来庭園が健全な自然を取り戻すキープレーヤーになれるか、あるいはいつまでも自然の要求に対してあまり役に立たないアプローチを続けるかは人々の取り組み次第だ。庭園を自然と野生生物にとって自立した安らぎの地に変えるには私たちにはわからないことが多すぎるうえ、そのプロセスは厄介で手間がかかり面倒なものに思われる。そんな私たちに、筆者はきれいで永続する庭園を作り上げるためのキラッと光るデザインのアイデアや実用的な方法を教えてくれる。

 例えば庭園を造る場所の環境をしっかり把握すること。計画を立てる上で日の出・日の入りの地点、季節による気候の違い、土壌、水質などについてしっかり調査し理解しておくことは重要だ。庭園全体の美しさを追及するよりもエコの観点が基準になって全体の構成を決定することが望ましい。堆肥、ひいては土壌はガーデニングの核心であり、それを適切に管理することは自然と調和して有機的にガーデニングを実践するための大原則である。本書ではたい肥を作るいくつかの方法やその注意点を丁寧に画像と共に紹介している。

それ以外にも雨水の利用方法や昆虫など野生生物との共存、植える植物の種類や植え方など、具体的な事例が満載の本書は野生生物が生き生きと育つ環境を人為的にではなく自然に醸成するための格好の一冊である。