ブックレビュー ブックレビュー

原題 iBrain: Surviving the Technological Alteration of the Modern Mind
著者 Gary Small, Gigi Vorgan
ページ数 229ページ
分野 脳科学/社会学
出版社 William Morrow
出版日 2008/10/14
ISBN 978-0061340338
本文 進化を続ける現代のデジタル社会は、どのような問題をはらんでいるのか? 我々は今後どのように進んでいくべきなのか?

著者は、情報伝達手段がテレビ・ラジオ・新聞などの旧メディアからインターネット・ブログなどのデジタルメディアへと変化した現在、これらを活用する新しい世代が出現していると指摘する。そして、現代社会に生きる人間を「デジタルネイティブ」と「デジタルイミグラント」の2種類に分類し、前者は生まれながらにデジタル技術を身につけている現代の若者、後者はデジタル技術を身につけようとしている段階の世代と定義し、デジタルネイティブが社会にもたらした変化の事例を政治、経済、社会、メディアなど、分野を細かく分けて説明。同時に、この変化が脳に与えた影響、ネットに依存しなければ生きられない現代社会、豊かな知性や想像力を持ちながらも、心の温かさや相手の気持ちを理解する能力が不足しているデジタルネイティブの現状についても解説する。

続けて著者は、今後のデジタル社会を我々がどのように生きていくべきかを述べ、デジタルネイティブは感情の表現方法やコミュニケーション方法を習得すること、デジタルイミグラントはデジタル技術を習得することが必要になると説明。そして、今後は社会全体で、互いの足りない部分を補いながら生きていく組織を作り上げることが大切になると結論づけている。

脳科学、社会学、精神医学、デジタル工学などさまざまな要素を含みながらも、一般人にもわかりやすい言葉でまとめてある魅力的な一冊。