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原題 READING THE GLASS: A Sailor’s Stories of Weather
著者 Captain Elliot Rappaport
分野 海洋、気象、天文、化学、物理
本文   まだ血気盛んだった20代のころ、筆者はアメリカ北東部メイン州からグリーンランドまでスクーナーを走らせる仕事を請け負った。7月中旬のある日、風が吹きすさぶ大荒れの北極海で、すさまじい突風に見舞われた。風は丸一日吹き荒れ、気温は氷点近くまで落ち込む。おまけにゴンドウクジラの群れがデッキに乗り上げそうにもなった。嵐が収まった翌朝、びしょぬれになった天気図に改めて目を通すと、そこには典型的な北大西洋低気圧が示されていた。彼の船はそれに遭遇したのだった。それは大変な経験ではあったが決して予期できないものではなかったのだ。

 本書では30年以上も海の世界で生きてきた筆者が豊富な体験と科学的な知見に基づき、これからこの厳しい世界に飛び込もうとしている後輩たちに必要な知識と技術を伝えようとしている。天候は相互作用の産物である。空気、水、大気中を循環するエネルギーなど、様々な要素が渦巻く中で、そのどこに位置するかによって現象の現れ方が変わってくる。そのモデルが実例をもって示され、大気の流れが生み出す事象が読者の脳裏に焼き付けられるだろう。

 科学技術が発達した現代でも、かつてナポレオン時代に標準化された道具、温度計、ビューフォード風力階数、気圧計を使って船乗りたちは定時ごとに計測を行う。その計測器具を伝統的に”The Glass”と呼んでいる。デッキ上で取得されたデータは気象学の知識とともに海に生きる男たちにとっては欠くことができない。ここでは初歩的な気象学が紹介される。地球上の空気の流れ、天候変化の予兆となる雲の動き、マイクロバーストや落雷やトルネード、サイクロンなどの異常気象、さらに風の渦を利用した航海術などが説明されている。また、練習船での公開を例にとり、海上での経験も披露される。氷から過去の歴史を振り返り、火星の天候に思いを巡らす。さらに、情報源として有用な、新聞、雑誌、ウェブサイトなどのメディア、海洋関係専門の書店や参考書籍、博物館、学校などのリストもある。海のことを知りたければ絶対に手を取るべき一冊だ。