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原題 Post-Growth Living: For an Alternative Hedonism
著者 Kate Soper
ページ数 240
分野 社会、環境、時事、倫理、哲学、心理
出版社 Verso
出版日 2020/09/29
ISBN 978-1788738873
本文  とどまるところを知らない気候変動。その現実は私たちが生きる大量消費資本主義社会と結びついており、解決の糸口さえ見いだせないでいる。無限の成長を疑わず安価で使い捨ての利く商品を消費することによって、世界が、さらに私たちも、私たちの生き方すらも破壊されてしまう。目の前に迫りつつある危機を回避する方法はあるのか。あるいはその危機に真っ向から取り組む流れを作り出すことができるのか。
 
本書で哲学者でもある筆者が提案しているのは新しい生活へのビジョン、すなわち無限の成長と繁栄とは別のものとして切り離すことを可能にするビジョンである。最も強調されているのは生きることの喜びであり、モノを消費することよりも、自由な時間とそれを創造的に使うことができる未来、さらにやりがいのある仕事と満ち足りた生き方ができる未来を作り出すことである。

 そのためにカギになるのは消費に対する人々の意識である。消費は快楽であるという幻想を打ち破らなければいけない。一筋縄ではいかないが、実際にはそれほど多くモノを買ったり消費したりしなくても何とかなるものだ。逆に少なければ少ないほど人類は豊かになると筆者は主張する。地球を守り、我々が生きていく場所を確保するためには罪悪感と我慢強さだけでは役に立たない。今までとは別のヘドニズム(快楽主義)、すなわち慣れ親しんでしまった消費優先主義にとらわれない新しい価値観と感性が、どこの社会でも必要欠くべからざる要素となるだろう。