原題 | BELONGING: The Ancient Code of Togetherness |
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著者 | Owen Eastwood |
ページ数 | 352 |
分野 | 心理、スポーツ、文化人類学、自己啓発 |
出版社 | Quercus |
出版日 | 2021/05/27 |
ISBN | 978-1529415063 |
本文 | ファカパパ(whakapapa)とはマオリ語で人間の根源的な帰属欲求を具現化した考え方である。誰もが決して切れない頑丈な人間の鎖の一部であり神聖なるアイデンティティと文化を共有しているという強力な霊的信念を表している。 マオリの血を引く筆者はこの概念を利用してチームから最高のパフォーマンスを引き出している。本書には彼を世界で最も人気のあるパフォーマンスコーチに仕立て上げたエソスが様々な実例を通して紹介されている。 われわれの祖先はもともと集団に属することが生存への条件であることを本能的に理解していた。逆に孤立したりグループから排斥されたりすることは死を意味していた。それは今でもわれわれが恐れている状態である。深刻な社会的排他状態を経験した者が鬱状態になる確率はそうでないものの20倍にも上る。一方親密な関係を持つことは受け入れられ守られているという信頼感を持つことに他ならない。 世界に冠たるラグビーのオールブラックス。最強であるために常に変わり続けているこのチームで重要な概念がファカパパである。このチームに選ばれた者は100年以上も続く伝統に加わったことを意識しなければならない。新しいメンバーは儀式を通じてアイデンティティを身に付け家族の一員となる。 クリケットの南アフリカ代表チームはせっかく上り詰めた世界の頂点にとどまることができずにもがいていた。チームのメンバーは人種も宗教も種々雑多で、フィールド上のプレーで認められないとチームに居場所がなかった。チームを変えるためにはメンバーの意識改革が必要だった。コーチの一人はチームのシンボルであるプロテアの花に目を付け、そこからチームを一つにする話を紡ぎ出した。 ホモサピエンスの進化や先祖の英知に基づく知見を織り込み、スポーツやビジネスにとどまらず芸術や軍隊の世界まで高度なパフォーマンスが要求される場面で利用できるアイデアが披露されている。共通の目的を定義する、将来の成功を描き出す、グループの中で演じられる”silence dance”を理解する、逆境を競争上の優位性に変えることなども筆者のユニークなアイデアとして紹介されている。 |