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原題 GENIUS MAKERS: The Mavericks Who Brought AI to Google, Facebook, and the World
著者 Cade Metz
ページ数 320
分野 人工知能/AI/IT
出版社 Random House Business
出版日 2021/3/18
ISBN 978-1847942135
本文 人工知能は、長い間、達成不可能と見なされ、大手ハイテク企業や大学に無視されてきた。そんな中、2008年に起きた2つの出来事がすべてを変えた。1つ目は、大学のAI研究者とマイクロソフトのプログラマーの出会いだった。もう1つは、グーグルのとある研究者がAI開発に力を注ぐよう自社の重役を説得したことだった。それから数カ月のうちに、マイクロソフトとグーグルは、音声認識と画像認識の能力を大幅に向上させる画期的な成果をあげた。そして両社とも、完全なAIを最初に実現した企業は、その後のテクノロジー業界を数十年にわたって支配できることに気づいたのだ。競争は始まっていた。

本書は、人工知能の先駆的な時代から現在にいたるまでの成果を解説し、将来の可能性を模索する。また、グーグルやマイクロソフト、フェイスブック、オープンAI(人工知能を研究するアメリカの非営利団体)などの巨大企業の間で起きている開発競争の実情にも触れる。これらの企業は、並外れた可能性とリスクが共存するテクノロジーの開発において、独自のカラーを示している。それぞれの企業の独自性とビジネス戦略は、すでにテクノロジーの世界を劇的に変えており、今後も変え続けるだろう。

さらに本書は、人工知能について解説し、個人や企業がどのようにその開発に携わっているのかを示すだけでなく、この技術に対する深刻な疑問を投げかけている。AIはすでに我々の生活に深く入りこんでおり、余暇の過ごし方やショッピングの提案、車の運転、工場の生産ライン、軍事兵器さえも導いている。我々はさらに高度なAIを追求するべきなのか。強力なAIは、人類をどのように変えていくのか。さらに、知性とは何か。人間であるとはどういうことなのかという道徳的な問いを読者に投げかける。