原題 | Gigantism |
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著者 | Geert Noels |
ページ数 | 240 |
分野 | 社会/経済/環境 |
出版社 | Lannoo |
出版日 | 2019/3/12 |
ISBN | 97-9077445372 |
本文 | 巨人症(Gigantism)という語は経済の文脈にはそぐわない。本来成長ホルモンの過剰分泌により、身体が巨大に発達した人を指す言葉だからだ。しかし今、同じようなことが組織では起きている。企業も、団体も、NGOも、国際機関も、サッカークラブもみな大きくなり過ぎた。その結果引き起こされた不均衡と経済的混乱は他の分野や活動にも波及している。それを分析して治療法を探る試みが本書の趣旨だ。 巨大企業と言えばアップルや、グーグルやマイクロソフトが思い浮かぶ。さらにアリババや小米科技といった中国勢もそれに肩を並べる。例えばアメリカのテクノロジー企業の上位6社の時価評価額合計は、その次に並ぶ96社の合計と同じである。ヨーロッパの上位3社、ネスレ、ロイヤル・ダッチ・シェル、ロシェを合わせても、アップルに太刀打ちできない。巨大化とともに寡占化も問題をさらに深刻にしている。 ヨーロッパサッカー界の最高リーグ、チャンピオンズリーグでは1992年の創設以来、勝者がより巨額な賞金を獲得できるシステムが導入され、その結果強豪クラブには金と選手が集中し、それ以外のチームはますます勝つチャンスを失っている。これを筆者は「チャンピオンズリーグ・エフェクト」と呼び、サッカーだけでなく建築業、製造業、商業など多くの現場で見られる現象だという。効果は健全な競争を殺し、持続可能な成長をもたらさず、人々を抑圧し、燃え尽き症候群や肥満などのライフスタイルの病気を引き起こしてしまう。 私たちの健全な未来は、より小さく、より遅く、より幸せな経済を目指さなければならない。ユートピア経済ではなく、社会的、生態学的、経済的という人間のあらゆる側面を考慮に入れた経済。成長への執着に導かれず、次世代に借金を負わせることなく、社会的歪みを是正し、環境への負担を低減する経済。筆者は、巨人を飼いならし、世界経済の中に個人の居場所を与えるために、10のルールを提唱している。 |