原題 | GAME CHANGERS |
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著者 | João Medeiros |
ページ数 | 416 |
分野 | スポーツ・ノンフィクション |
出版社 | Little Brown |
出版日 | 2018/08/30 |
ISBN | 978-1408708460 |
本文 | 1996年のアトランタオリンピックでイギリスはメダル獲得数で36位だった。アルジェリアやベルギーやカザフスタンといった国にも後塵を拝したのだ。この最悪の結果は国辱であるとされた。ところがそこで何かが起きた。2000年のシドニー、それから2004年のアテネでチーム・グレートブリテンは見事に10位に躍進した。2016年のリオではとうとう67個のメダルを獲得し、中国、ロシアを抑え、堂々2位になった。誰の目から見ても明らかなこの大逆転はなぜ可能になったのだろうか。 本書に登場するコーチやスポーツ科学者はスポーツの分析や解釈の方法を見直し、追い詰められた状態でも能力が発揮できるようなトレーニング方法を考え出した。それはゲーム中に選手の動きを細かくデータ化し、そこから導かれたものだった。彼らはこの手法をいろいろなスポーツ選手や組織に売り込む。イングランドリーグ成績不振にあえぐサッカーチーム、将来有望なスカッシュの若手選手、F1の強豪チーム、けがでボート競技を断念しスケルトンに転向した選手などが彼らにデータを提供し、フィードバックを受ける。中には疑心暗鬼の選手もいるが、その分析結果から導き出された有効なトレーニング方法やゲームプランは彼らを確実に一流のアスリートに育て上げていく。数十年に亘って徐々に積みあがってきた実績はやがて大きく結実し、このシステムはプレミアリーグチャンピオンのマンチェスターシティから、アメリカズカップで好成績を上げたセイリングチームまで、エリートチームになくてはならない存在になっていった。そしてその先にはリオオリンピックが待ち構えていた。 科学的方法と試行錯誤の両方を使って科学者たちは加速学習、生理学的適応の仕組み、エリートチームの裏にある組織の原則、ホルモンと環境がパーフォーマンスに与える影響の理解といった理念を一つ一つ暴き出していく。こうした発見はスポーツ選手の養成だけに応用が限られるわけではない。一般的な分野、ビジネスやリーダー養成や教育の世界でも研修の方法として応用できるであろう。 |