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原題 Win At All Costs: Inside Nike Running and Its Culture of Deception
著者 Matt Hart
ページ数 432
分野 スポーツ/ビジネス
出版社 Dey Street Books
出版日 2020/10/06
ISBN 978-0062917775
本文 2019年世界陸上ドーハ大会の4日目、陸上界に衝撃のニュースが走った。

米スポーツ用品大手ナイキが主催するオレゴンプロジェクトのヘッドコーチ、アルベルト・サラザールと同チームのコンサルタントをしていたジェフリー・ブラウン医師が、ドーピング違反で4年間の資格停止処分を受けたのだ。世界の長距離を牽引してきた同チームには、マラソン日本記録保持者の大迫傑選手も所属し、「世界最高の中長距離チーム」「メダルを狙う精鋭の集まり」として知られていた。その結果、同社はプロジェクトの閉鎖に追い込まれることになった。

さかのぼる2017年7月、アメリカコロラド州に住むガウチャ―夫妻のもとをFBIの捜査官が訪れる。彼らは2013年に自分たちのコーチであったサラザールを米反ドーピング機構に告発していた。関係者に対して何の制裁も与えられていない中、FBIが動き始めたということはいずれ処罰が下されることをそれとなく示していた。

1970年代にアメリカは、世界の長距離界で最も優秀なランナーを輩出していた。それが、80年代に入るとアフリカ勢の勃興とともに、世界選手権やオリンピックで獲得したアメリカのランナーのメダル数は激減し、マラソンでは1982年にサラザールが優勝して以来、男子が優勝したのはたった一人だけである。

その状況を憂慮したのがほかでもないサラザール本人である。すでにランニングコーチになっていた彼は、世界制覇を目指すナイキと協力して、世界で勝てる選手を養成する組織、オレゴンプロジェクトを発足させる。

当時記録が伸び悩んでいた、カラ・ガウチャ―はサラザールとそのプロジェクトの話を聞き、その門をたたく。きな臭い噂話をきかなかったわけではない彼女が思い切って飛び込んだ世界で経験したのは…

本書はスポーツドラマとビジネス界の内幕を織り交ぜて、ナイキのランニングプログラムの真実と勝つためには手段を選ばない社風を暴露している。