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原題 Dot Dot Dot. When Technology Became Humanity and Things Got Complicated
著者 Laurie Segall
分野 メディア/時事/インターネット
出版社 Dey Street / Harpercollins
出版日 2021
本文 テクノロジーは、救いでも罰でもない。それは私たちの現在、そして将来の姿を映し出す鏡だ。本書は、激動のIT革命第二波を最前線のジャーナリストとして経験した著者の、自身と時代の記録である。

物語は2008年の金融危機から始まる。経済が出口のない迷路に入り込んでいたように見えたその頃、CNNにニュースアシスタントとして採用された本書の著者ローリー・シーガルは、不況の灰の中から復活するがごとく台頭を始めた異端児たちを発見する。それはIT起業家たちであった。シーガルはその起業家たちが生み出した、ソーシャルメディアという新たなプラットフォームを取材に利用することにした。彼女は犯罪の捜査、テロリストの発見、セックス・パーティからハッカーの会議まで、あらゆるスクープをいち早くすっぱ抜いていき、主任特派員にまで昇格する。彼女はそのIT起業家たちとのコネクションも作って取材も行い、彼らにいち早くスポットライトを当てていった。

しかし、その異端児たちは、世界的な影響力のあるリーダーになっていくにつれ、これまで築いてきたコネクションを台無しにするなど、違う人間になってしまったかのようでもあった。シーガルが利用してきたプラットフォームも、もともとのあり方を失ってしまい、彼女自身も、変わってしまう危険にさらされているのだと思い知ることになる。

本書は、ジャック・ドーシーやマーク・ザッカーバーグなどの若き起業家、そして著者自身のサクセスストーリーであると同時に、成功が人間をどのように変えるのかという物語であり、変化し続ける世界の中で変わらぬ価値を探求する物語でもある。そこで描かれるのは、反抗と停滞、成功と失敗、イメージと真実、交流と断絶のとめどない緊張関係であり、究極のドラマである。現代の歴史上で最も重要なこの十数年間の時代と人間のあり方を、深い観察力とユーモアを交えて描いている。