原題 | Credit the Crocodile. A Tale of two teens - and some crocodiles - triumphing over the politics of the African wild |
---|---|
著者 | Godfrey Harris |
分野 | フィクション全般/時事/自然保護 |
出版社 | Consideration Books |
出版日 | 2018/04 |
ISBN | 978-0935047899 |
本文 | アフリカにおける野生動物の保護は現在、世界的な課題であると見なされ、さまざまな団体によってさまざな運動や提言が展開されている。しかし実際のところ、欧米諸国の人々はこれからこの問題にどのように向き合っていけばいいのだろうか。本書は若い世代に向けてその答えを示す啓蒙的な小説である。 理想に燃える2人の若者、ポールとタイラーは、ギャップ・イヤーを利用してアメリカから南アフリカにやってきた。彼らの目的は、農場で飼育されているワニを解放し、野生に戻そうという運動を現地で行うことだった。しかし彼らは現地の住民たちに疎まれ、騒ぎを引き起こして逮捕されてしまう。そこで2人に言い渡された罰とは、「解放された」ワニのように、自然の中で2週間暮らさなくてはならないというものだった。 この様子を見ていたのが、農場で飼われているワニたちのリーダー、クレディットだ。人間の言葉を理解することができるクレディットは、仲間たちと協力してポールとタイラーを守り、彼らに重要なメッセージを託して無事にアメリカに帰ってもらおうと企てる。そのメッセージとは、アフリカの野生動物の管理責任はアフリカにあり、欧米の一方的なやり方では動物を本当に守ることはできない。アフリカにはアフリカのやり方があり、先進国は現地に寄り添った方法で野生動物保護の運動を展開するべきだ、というものだ。ワニたちとの絆によってこのことを知った2人はアメリカに帰ったあと、自分たちで新しい団体を設立する。 本書は10代向けの小説の中では珍しく、政治的なトピックを主題にしているものである。しかし小難しさや説教臭さを感じることはない。この本を読むことで若い読者は、小説のストーリーを楽しみつつ、野生動物保護、持続可能性、アニマル・ライツ、欧米諸国と非欧米諸国との関係といった問題について知り、考えることができるだろう。 |