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原題 Nano Comes to Life:How Nanotechnology Is Transforming Medicine and Future of Biology
著者 Sonia Contera
分野 物理学/生物学/化学
出版社 Princeton University Press
出版日 2019/11/05
ISBN 9780691168807
本文 本書はナノスケールの世界に目を向ける。極小世界はタンパク質やDNAが物理学と細胞と生物学が出会う場所である。急速に進歩しつつあるナノテクノロジーの世界に読者を引き込み、生命の基礎部品であるタンパク質やDNA分子制御の技術を紹介する。著者はこの新しい分野の専門家として、ナノテクノロジーが私達の健康や生命にどう関わって行くかを示してゆく。

著者は、この分野の専門家として今後の見通しについても述べている。現在使われているナノテクノロジーが生物学への理解や相互作用そして操作までを可能にしたと解説する。例えばDNAを使ってタンパク質やそれ以外の生物学的分子の構造を人工的に設計・組み立てることも可能になっている。これらの技術で組織や臓器を作り、新薬の製造や臓器移植にも活用されようとしている。また、ナノテクノロジーは医薬品にも革命を起こそうとしており、それが広範囲的に我々の健康や寿命に影響を与えている。例えばナノスケールのマシンがより効率的に個々のがん細胞に薬を届けたり、ナノサイズの抗生物質が抵抗力のあるバクテリアと戦ったりしている。

将来的にはナノテクノロジーと生物学、物理学、医学はますます融合していくだろう。そしてロボット工学や人工知能などの最先端技術とも融合し、新しい「トランスマテリアルの時代」の先駆けとなろうともしている。我々はこの技術から生じるリスクと利益を予測する必要があるが、この革命的な研究から得られる利益はリスクを上回り、この利益が社会に分配されるはずである、と著者は締めくくっている。