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原題 Die Abgehobenen: Wie die Eliten die Demokratie gefährden
著者 Michael Hartmann
分野 社会/政治/経済
出版社 Campus Verlag
出版日 2018/8/16
ISBN 978-3593509280
本文 エリート階級はますます閉鎖的な集団になっている。それは経済エリートだけではなく、政治エリートも同様だ。彼らの生活世界は、一般市民のそれとは大きくかけ離れている。エリート階級は自分たちが独自のルールを持っていると考え、税金や金融についてのスキャンダルを次々巻き起こす。これを野放しにしたときにもたらされる帰結が、政治の閉塞感と右翼的ポピュリズムであると著者は断じている。

本書ではまず、エリート階級がどのような性質を持っているのかが分析される。著者の定義によればエリートとは、権力を行使する立場にある階級のことであり、一般市民とは異なる独自のルールで動く。彼らは業界や専門領域を越えて横のつながりを強化するが、その多くは国家という枠組みを越え出るものではなく、グローバル・エリートや世界市民的エリートは実は多くないという。次に、エリートがいかに社会的不平等を再生産し、強化するかが示される。彼らは実のところ公共の利益よりも自らの利益を優先しており、経営判断や政策判断も自分たちの出自や利益に基づいてなされている。そして最後に、このようなエリート層が作り出す政治的閉塞感と右翼的ポピュリズムに対抗しうる政治的・社会的立場が提唱される。

エリート階級の批判的研究を社会学の領域で長年行ってきた著者による本だけに、随所に鋭い洞察が織り込まれている。社会的不平等の拡大やその再生産が問題になっている現代においては、興味を持つ読者を獲得しやすい本であろう。