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原題 Asia 2030: Was der globalen Wirtschaft blüht
著者 Karl Pilny
分野 世界経済/政治
出版社 Campus Verlag
出版日 2018/9/7
ISBN 978-3593508337
本文 アジアの専門家である著者が、最新のデータや統計を用いながら、アジアの政治経済の現状を分析し、将来の展望を考察する。

この本は3部構成になっている。「新しい権力」と題された第1部では、アジア諸国の政治体制や権力関係が、ハード・パワー、ソフト・パワー、スマート・パワーという観点から分析される。「新しい市場」と題された第2部では、中国が中心になって作ろうとしている新しいシルクロード経済圏、デジタル化による市場への影響、資源・エネルギー政策などについて分析されている。「新しい人間」というタイトルの第3部では、アジアの人々の生活スタイルが人口変動や技術革新によってどのように変わっていくのかが考察される。

アジア、特に中国が、欧米に代わる新たな極として存在感を増している状況において、2030年までに、どのように権力関係や対立関係が生じるのか、どのような衝突や摩擦に備えなければならないのか、市場の動向はどのように変わっていくのかという問いは、避けては通れないものである。本書は、それらの問いに対して、私達が知っておくべき答えを提供している。あまりにも専門的な領域には深入りして論じてはいないが、それゆえにこそ本書は、このテーマに興味があるものの、まだ知識がないという読者のためのよき入門書となるだろう。