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原題 Dragonflies and Damselflies: A Natural History
著者 Dennis Paulson
分野 生物学
出版社 Princeton University Press
出版日 2019/3/26
本文 多くの人を魅了する美しいトンボたち。恐竜の時代から長い歴史を生きてきた興味深い生き物である。南極以外の大陸と真水のある島で見られ、その種数は6,308に上る。身近にいる昆虫として長年研究されてきたが、詳しく見れば見るほど興味深い発見がある。特にその順応性の高さと多様さは驚異的だ。本書ではトンボ研究の第一人者が、トンボの進化、発達、行動、生態と社会について、美しい写真を贅沢に使い解説する。

グラデーションの美しいイトトンボや、ハチドリを食べてしまうような大型のトンボに、オスのように見えるメスがいるトンボなど、新鮮な驚きを生む写真や記事が並ぶ。各トンボは写真とともに紹介され、どの大陸の、どのような場所に住んでいて、どのくらいの大きさなのか分かりやすくまとめられている。

また、トンボと人間のかかわりの章では、他の生物が人間に住処を追いやられて数を減らす中、採土場に溜まった水や灌漑用の溜池、公園の池や、人工湿地など他の生物は生息できない場所で生きのびている「シムプリキコッリスコシブトホソミトンボ」を紹介している。また、地域によっては不吉だと見られることもあるトンボが文化に愛される例として、日本では「赤とんぼ」がレストランやホテルの名前になっているだけでなく、みんなに愛される有名な歌の題材になっていることも紹介される。

興味深い生殖行動、知る機会の少ない幼虫の水中生活なども、3章、4章で紹介されている。解説はシンプルでわかりやすく、巻末には用語集も付いている。宝石のような美しさに溜息をつくもよし、素朴な顔に癒されるもよし、トンボの驚くべき生態を楽しむもよし、ゆっくりと楽しめる贅沢な一冊だ。