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原題 SEX IN THE WORLD OF MYTH
著者 David Lemming
分野 人文科学/思想哲学
出版社 Reaktion Books
出版日 2018/9/17
ISBN 978-1780239774
本文 人類は古代からセックスに並々ならぬ関心を寄せてきた。世界中の神話や聖書にさえも数多くのセックスにまつわる話が描かれている。

セックスほど、人間を魅了し、また混乱させるものはない、と著者は言う。人間と動物を分けるもののひとつが性に対する姿勢だとすれば、神話のなかのセックスには、人間の精神のあり方が映し出されているはずだ。実際、世界中の神話はそれぞれの社会を反映し異なるところも多いものの、創造神話における天地の分離、豊穣の女神、ファムファタル、近親相姦、同性愛、性器崇拝、トリックスターなど、興味深い共通点が数多い。
著者は、さまざまな神話の共通点と相違点を丁寧に拾い上げ、それぞれの社会独自の価値観と人間普遍の心理とその意味をわかりやすく解きあかしてくれる。各文化がそれぞれの神話を持っているが、私たちが夜眠る間に見る夢にもある程度共通点があるように、神話にも共通した人間の精神が表れている。それは夢が私たち人間の思いを映し出すものであるように、神話が文化の見る夢を映し出しているからなのだ。

本書には、日本の古事記や日本書紀に登場する神話のなかのセックスも取り上げられており興味深い。イザナギとイザナミの間には現在の神道全体にも共通する男性優位の思想が表わされている一方で、古代日本が母系社会であったことが太陽神アマテラスが女神であることから読み取ることができるという。さらに日本の古代社会のあり方だけでなく、全世界の神話との共通性が見られることには、一種の感慨をも覚える。

一般向けにわかりやすく書かれており、世界中の神話をあらすじとはいえ読み比べられるのはとても楽しく、知的な面白さを感じる。本文や神話にまつわる図版も数多く、セックスという多くの人にとって興味深いであろうトピックを入り口に比較神話学の扉をやさしく開いてくれる本。