ブックレビュー ブックレビュー

原題 Real Zombies, the Living Dead, and Creatures of the Apocalypse
著者 Brad Steiger
ページ数 300ページ
分野 オカルト/超常現象
出版社 Visible Ink Press
出版日 2010/5/1
ISBN 978-1578592968
本文 ゾンビと聞いて浮かぶイメージはこんな感じだろうか---自然現象、あるいは研究室内での何らかの悲劇によって、沢山たくさんの人々が殺される。突然、その死体たちが起き上がり始めたかと思うと、ふらふらとさまよいながら、生きた人間の血と肉を求め、惨劇が繰り返される……---本書は、そんな一本調子なゾンビしか描けないハリウッド映画の製作者の目を覚ますような一冊だ。

本来、伝統的ゾンビというものは非常に多文化的であり、そのおぞましくも豊かな世界をメディアは完全に見落としている。

呪いとまじない、儀式とイニシエーション、墓場を荒らして死体を食らうグール、魔法によって命を得る粘土人形ゴーレム、アメリカ・インディアンの神話に登場する人食いウィンディゴ、神聖なブードゥーの聖地、聖書の中のゾンビとモンスター、中国、日本、太平洋諸島、インド、ペルシャそしてネイティブ・アメリカンの伝統的ゾンビ……。本書では、半世紀以上もオカルトや超常現象の研究に身を捧げてきた著者が集めたゾンビに関する「実話」が、多岐にわたって紹介されている。歴史的、あるいは文化人類学的視点からも興味深く読めること本書は、「トンデモ本」とは一線を画す。

ニューオーリンズの闇にいまだに潜む、角としっぽを持つ奇怪な生き物についての話「バーボンストリートの悪魔の赤ちゃん」、何百ものゾンビ戦士が女王の覇権を守るために戦う「ブラック・キャット・ママ・クートゥーとゾンビ大戦争」など、本当にあった30もの身の毛のよだつゾンビの物語を軸にした本書は、歴史上の、そして世界中のあらゆるゾンビとの遭遇を記した、貴重なゾンビ・コレクションである。