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原題 Teatimes: A World Tour
著者 Helen Saberi
分野 食文化/歴史
出版社 Reaktion Books
出版日 2018/6/11
ISBN 978-1780239286
本文 私たちにとって水の次に身近な飲み物ともいえるお茶。お茶が世界中の人々の生活にとって、なくてはならないものになったのはなぜか。本書は、イギリス連邦諸国を中心に、アメリカ、ヨーロッパ、東アジア、さらにはアフリカから南米まで、世界中の「ティータイム」の歴史を紹介する。

前著『お茶の歴史』は、茶の産地や製法、交易など、「茶」自体を中心に紹介したものであったが、本書では、「お茶の習慣」にスポットライトを当て、お茶というものがその土地の人々の宗教や価値観、風土、メンタリティなどといかに深く結びついているかという点を掘り下げる。ひと口に「お茶」といっても、飲まれ方は各地でさまざまで、比べるからこそ見えてくるものもあるのだ。

19世紀、イタリアでジノリの食器を使って伝統的英国式メニューを提供したエピソードをはじめ、一見コーヒー派が優勢と思える大陸ヨーロッパにおけるお茶の「立ち位置」など、雑学的な面白さも随所にあふれている。日本にも触れられており、自然への感謝や精神的充実の探求と結びつきながら発展していった茶道のみならず、喫茶店の定番メニュー、ナポリタンやカツサンドまで登場する。

巻末のレシピでは、ロシアンティーやインドのマサラチャイ、イギリスのアフタヌーンティーに欠かせない各種サンドイッチ、ペルシャの卵料理などなど、世界中のお茶や料理も紹介されている。