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原題 Reset: My Fight for Inclusion and Lasting Change
著者 Ellen Pao
分野 社会/ビジネス
出版社 Spiegel & Grau
出版日 2017/9/19
ISBN 978-0399591013
本文 時代の先端をいく都市シリコンバレー。起業家やチャレンジ精神のイメージをうまく使って多様性を受け入れる文化を装ってはいるが、企業上層部の85%を白人男性が占めており、実のところ男性中心の思考で動いている。

このシリコンバレーの白人男性優位主義の実態を「裁判」によって世間に晒したのが、本書の著者エレン・パオだ。彼女は、かつてアナリストとして働いていた老舗ベンチャーキャピタルを性差別とセクハラで提訴し、全米を驚かせた。しかし、2015年に全面敗訴。そこから2年が経過した今、当時マスコミが興味本位でセンセーショナルに報じた訴訟の内幕を、みずからすべて告白する。

エレンは冷静な視点で、具体的にどんな場面でどういうハラスメントがあったのかをつまびらかにしながら、どうして男性がそのような行動をとるのか、企業内でのセクハラやパワハラ、人種、年齢、国籍による差別がなぜなくならないのかを客観的に分析する。

一般に、職場での差別問題は話題にされにくい。日本でも、2016年の女性活躍推進法成立以来、幹部女性の数を増やそうという風潮が高まっているが、それだけでは男女の「意識の格差」を解消できない。考え方の「リセット」が必要だという著者の意見にうなずく日本人の女性読者は多いだろう。

英フィナンシャル・タイムズとマッキンゼーが選ぶ「2017年最高のビジネス書」にエントリーされた、著者渾身の一冊。