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原題 Live Work Work Work Die: A Journey into the Savage Heart of Silicon Valley
著者 Corey Pein
分野 経営/社会
出版社 Metropolitan Books
出版日 2018/4/24
ISBN 978-1627794855
本文 アメリカには今、ウォール街よりも強欲でふてぶてしい、儲け主義の街がある。アップル、グーグル、フェイスブック、ツイッター、オラクルなど、IT企業の巨人が並ぶ、あの「シリコンバレー」だ。

Tシャツとジーンズ姿の若者たちが起業家精神に燃えながら、洒落たフリーワークスペースで刺激ある日々を過ごす、クリエイティブな街。残念だが、こうしたシリコンバレーのイメージは幻想でしかない。

かつて、人種のるつぼと呼ばれたサンフランシスコで、文化と芸術が豊かに花開いていたシリコンバレーは、金の亡者に汚染された奴隷の街に変貌してしまった。いまや、AIやフィンテックなどの流行に乗り、ベンチャーキャピタルが乱暴に青田買いしたスタートアップ企業と、そこで働く末端のプログラマーであふれかえっている。彼らはフェイスブックやグーグルの信者となり、似たような服装、そっくりの行動パターンと思考で、燃え尽きるまで使い倒される奴隷だ。

本書は、著者自身が現地企業にプログラマーとして潜入した実体験をもとに、夢を見事にぶち壊すシリコンバレー・スタイルをコメディタッチで綴りながら、その舞台裏で糸を引く富裕層や政府の矛盾を鋭く突く。ページをめくる読者は、その実態が決して他人ごとではないと気づくはずだ。日々無料で使っているSNSやアプリによって、本当は何を失っているのか、真剣に考えざるを得ないだろう。