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原題 War and Art: A Visual History of Modern Conflict
著者 Joanna Bourke(編)
分野 文化/歴史
出版社 Reaktion Books
出版日 2017/11/1
ISBN 978-1780238463
本文 戦争の悲惨な歴史、特に社会の混乱によって最初に心に傷を負う女性や貧しい人々など、社会的弱者にフォーカスして歴史研究を続けてきた編者が、絵画や美術作品に表現された戦争についてのバラエティ豊かな論文を一冊にまとめた。編者も含めて総勢20人が、それぞれの専門分野の視点から、芸術と戦争の関係について論考を寄せている。

20の論文は、時代区分、作品ジャンル、アーティスト、その他の視点の4つに分類され、それぞれ独自の研究成果を披露している。

第一次大戦中、何カ月も続く塹壕戦の最中に兵士たちが手近にある薬きょうなどを使ってつくった塹壕アート。最後の浮世絵師と呼ばれた小林清親が日清・日露戦争期に製作した木版の風刺画。編者のブルケ自身は、戦争画に描かれた性暴力シーンから、戦争で暴力を受ける一般の人々についての考察を執筆している。

どの論文も多くの図版を用い、多面的・包括的にまとめられているため、図版を参照しながらじっくりと向き合いたくなる。