ブックレビュー ブックレビュー

原題 Motivation and Performance: A Guide to Motivating a Diverse Workforce
著者 Adrian Furnham, Ian MacRae
分野 ビジネス自己啓発
出版社 Kogan Page
出版日 2017/2/3
ISBN 978-0749478131
本文 「モチベーションとは、行動に移すか移さないかの差のことである」という一文から始まり、モチベーションが仕事の成果を上げるのにどう作用するか、世代による違いはあるかなどを、科学的かつ実践的に考察していく。

例えば、パナソニックやクライスラーといった多くの有名企業に税務上のアドバイスやコンサルティングを行うRyan LLCの例を挙げて、昨今広まってきているフレキシブルな働き方とモチベーションについて分析する。ここでは、週50時間と決められていた就業時間を個人の裁量に任せ、完全な成果主義システムに移行したところ、社員のモチベーションとともに顧客サービスの質も上がったという、日本企業にとっても参考になる興味深い研究結果を紹介している。生産性を上げるには、社員の労働時間を増やすのではなく、個人が能力を最大に発揮できる環境、文化を作り上げるのが最良の道であるというのだ。

また、グーグルが社内にプレイルームや気まぐれに内装の変わる会議室などを設け、開放的で楽しい企業イメージを宣伝している例を挙げ、企業文化が社員のモチベーションに与える影響についても論じている。モラルがあり気の置けない職場環境では、業績も良い傾向にあるという。

モチベーションというとポジティブな意味で使われることが多いが、経済的、社会情勢的に不安定な環境では間違った方向に意識が向かってしまい、人に害を与えることがあると著者は指摘する。これには、社会問題となっているISやテロリストなどが当てはまる。本書では、こうした悪い方向にモチベーションを高める有害な組織の特徴なども挙げており、仕事のための自己啓発書としてだけでなく、自分の身を守るための心理学書としても読めるだろう。