ブックレビュー ブックレビュー

原題 Testosterone Rex: Myths of Sex, Science, and Society
著者 Cordelia Fine
分野 心理学/ジェンダー論
出版社 W.W. Norton & Co. Inc.
出版日 2017/1/24
ISBN 978-0393082081
本文 多くの人が、生物学的な性別が人間の成長過程で男女の間に根本的な分岐作用を与える中核的な力であると信じている。このような通説では、両性間の違いはこれまでの生物的な進化によって形成され、それぞれの世代ごとに性ホルモンと脳のなかに再現されてきたとされる。女性はより慎重で子育てに集中し、男性はより多くの異性を惹きつけるために自分の地位を高めようとする、というわけだ。現代社会に根強く見られる両性間の様々な不平等の原因もここにある。

Neurosexism(神経学的性差別)という神経科学現象の名付け親である心理学者、コーデリア・ファインは、本書で、このような通説を覆す進化生物学、心理学、神経科学、内分泌学、哲学の分野における最新の研究成果を、緻密でありながら楽しく読める内容で紹介する。著者によれば、例えば、テストステロンとは男らしさを発現する強力なホルモン成分ではない。読者はさらに、通説として認められている男女間の嗜好や行動原理、おもちゃの好みや経済的リスクの取り方の違いなどに関する考えも覆されることになる。従来の遺伝・環境論争を超えて、より男女平等な未来に向けての期待とその実現への決意を表明する書。