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原題 Zombies:A Cultural History
著者 Roger Luckhurst
分野 文化/歴史
出版社 Reaktion Books
出版日 2015/10/15
ISBN 978-1780235288
本文 映画やゲームで誰もが目にしたことがあるだろう「ゾンビ」。だが、その起源がタヒチやアンチル諸島といった旧植民地に伝わる土着信仰の中にあることはご存知だろうか?

「小泉八雲ことラフカディオ・ハーンがゾンビに言及していた」という、日本人なら思わず興味を引かれてしまうエピソードで始まる本書には、「ゾンビ」という呼称の語源や、その意味の変遷、タヒチに「実在した」というゾンビの女性、1930年代のごく初期のゾンビ映画やパルプ誌でのゾンビ表現など、ゾンビに関する蘊蓄が満載だ。

しかし、本書は単なるトリビア本ではない。ゾンビを人類学・民俗学的に考察し、西欧帝国主義や現代資本主義の文脈で捉え直すなど、ゾンビ題材とした一級の文化史となっている。

ゾンビはただの「動く死体」ではなく、それぞれの時代で生き生きと変容し続けてきた、我々人間の姿の裏返しなのだ。