こちら翻訳出版部――株式会社ダイヤモンド社! | ||
イカロス出版『通訳・翻訳ジャーナル』 「フューチャー・イズ・ワイルド」制作の舞台裏を探る 長年読み継がれてきた 根強い需要がある名著の数々は 装丁を変えつつ刊行 年間約270冊の書籍と6種類の雑誌を刊行するダイヤモンド社。大正2年の創立以来、経済、経営、ビジネス関連書を一貫して出版するとともに、実用書、ノンフィクションなどの幅広いジャンルを手がける総合出版社だ。 |
翻訳書を扱い始めたのは昭和20年代の後半。28年にはフランク・ベトガーの『私はどうして販売外交に成功したか』が大ヒットし、その後もP・F・ドラッカーの著作群やリー・アイアコッカの『アイアコッカ――わが闘魂の経営』、最近ではエリヤフ・ゴールドラットの『ザ・ゴール』『チェンジ・ザ・ルール』といった数多くのベストセラーを生み出している。長年、経営者のバイブルとして読み継がれているP・F・ドラッカーの『現代の経営』のように、ロングセラーも多い。「経営もコアな部分は古くはなりません。定評ある経営書は根強い需要があり、装丁を変えながら刊行し続けています」と浅川まどかさん。 現在、翻訳出版は年間80冊ほどで、年間発刊数の約3割を占める。新刊情報は工ージェント、ブックフェア、編集者が探してきたものに加え、ビジネス書に強いという評判が海外まで広がり、外国の版元から直接寄せられる。 「翻訳出版の約8割はアメリカものです。最近は経営やビジネス分野ではアメリカと日本に時差はないので、アメリカで評判になってから取り寄せるようでは、間に合いません。アメリカの最先端か、定番のいずれかでないと。中間ではダメですね」(土江英明さん) 新しいマーケティング手法が成功し 話題をさらった『F・I・W』 昨年1月に発刊した『フューチャー・イズ・ワイルド』は、サイエンスフィクション分野で10万部を超える異例のセールスを記録した。人類滅亡後、どんな生物が地球上で栄えるのかシミュレートした話題作で、CG処理された異形生物たちの姿が目をひく。これまでにないジャンルの出版だっただけに、マーケティングでも新しい試みを行った。『フューチャー・イズ・ワイルド』の番組を放映しているディスカバリーチャンネルとクロスしたプロモーションを展開したのだ。 店頭にテレビを置き、書籍を陳列する横で映像ビデオを流したほか、書籍の発売を番組放送のタイミングに合わせ、番組中で本を紹介。発刊2〜3か月で新聞各紙の書評に取り上げられるなど、多くのメディアで紹介された。 今年2月1日には子ども向けのビジュアル本も発行。著者との信頼関係も深まっていることから、原書に大幅に手を入れることにも了解を得られた。日本向けに図の扱いを大きくし、データを補完するなどさまざまな工夫を凝らした自信作だ。春には新江ノ島水族館で「フューチャー・イズ・ワイルド ワンダーランド」展を開催するなど、大きなムーブメントを巻き起こしている。「今後も、経営の定番となるものはダイヤモンド社から出ているという路線は崩さずに、スピリチュアルなものや実用書など、多様なジャンルに積極的に取り組んでいきます。ビッグタイトル以外の良書をどう拾っていくかも大きな課題です」(浅川さん) |
うまい翻訳者は あとがきも素晴らしい。 質の高い訳文には、 ほれぼれします 編集長:土江英明さん |
本の売り込みには対応しているが、「あまりにダイヤモンド社とかけ離れたジャンルの本を持ち込まれても困ります。英語に関しては、編集者などの持つ情報量も多いので、イタリアやドイツなどの他言語が狙い目」と浅川さん。土江さんは、「最近はWEB経由での売り込みが多いのですが、同じようなジャンルの本を担当した編集者に直接持ち込んだほうが、有効なアドバイスなども得られます。本のあとがきなどを見れぱ名前もわかりますよ」とちょっとしたコツを教えてくれた。 ダイヤモンド社の場合、経営、経済書については、定評のある翻訳者に依頼することが多い。経営用語の定説を押さえる必要があるためだ。一方で、翻訳者の発掘には積極的で、軽い読み物系の場合にはTranNet(翻訳者選定電子オーディション)などを介して新しい人材を登用することもある。 翻訳者に求めるものは何か 「英語力、調査能力といった基本的スキルはもちろんですが、重要なのは日本語能力。読者に努力を強いるような文章ではいけません。ジャンルに沿った文体で、的確でわかりやすい文章が求められます。ベストセラーを作る人には理由があります。文章のクオリティが高く、スイスイ読める。読んでいてほれぼれすることもあります。自分なりに設定されているハードルが高いのでしょう。とにかく志が高く、仕事のレベルが高いです」(土江さん) 土江さんお勧めの文章修行法は、上手な翻訳者をみつけて、その人の訳書を読むことだとか。 「翻訳書と原書を比べながら読むと、ダラダラと訳さざるをえない部分を、スパッとはまる訳文に仕上げています。それからうまい翻訳者は、あとがきの文章もすばらしいですよ」 実際に、浅川さんはあとがきの上手な翻訳者に仕事を依頼し、満足いく結果を得たことがあるそうだ。これまでと違った翻訳書の見方を、ぜひ試してみてはいかがだろう。 取材/金子理 『通訳・翻訳ジャーナル』APR.2005 お話 出版事業局第三編集部 編集長:土江英明さん 経営企画本部海外版権担当:浅川まどかさん |
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