フランクフルトブックフェア 2007 October 10 - 14, 2007 Frankfurt, Germany Frankfurt Book Fair 2007今年も世界最大の出版イヴェント、フランクフルトブックフェアに参加してまいりました。世界規模で進む温暖化のせいかフランクフルトも近年は暖かくなっているように感じますが、それでも2日目からはコートが必要なくらい冷え込み、電車を待つ間は寒さに震えてしまいました。今回はフェア期間中にめずらしく鉄道のストがあり、その間はやや客足がにぶったようですが、それでも5日間で延べ28万人を超える来場者があったようです。会場では毎回話題になる書籍がありますが、今年は映画007シリーズ3代目、ジェームズ・ボンド役で有名なロジャー・ムーアのメモワール版権が競売にかけられ、数社間で争われましたが、アドヴァンス(前払印税金)が日本円にして数億円と高騰し、話題になっていました。 さて、私達Japanese Writers’ House(以下JWH)は今年も日本の作品の売り込みを中心に活動してまいりました。世界の出版関係者約8千人に向けて定期的に発信しているニュースレターが効果を発揮し、今回は、チェコ、ロシア、ルーマニア、スペイン、ポルトガル、ドイツ、韓国、アメリカ、イタリア、フランス等の出版社からアプローチがあり、日本の作品の翻訳出版を検討していただくことになりました。また、毎回ニュースレターの中で紹介している日本食のレシピ集をまとめて本にしたいというお申し出もありました。さらに、最近ではこのニュースレターをきっかけに全米ネットワーク向けのTV番組用に、JWHの著者に対して出演依頼まで来ています。こういった経緯もあり、今年で6回目の参加でしたが、当初に比べるとずいぶん日本作品の売り込みのための環境が整ってきて、マンガはもちろん、現代小説から実用書に至るまで、日本の作品に対する海外の反応が明らかに変わっているのが肌に感じられます。 海外で奮闘している日本の出版社のひとつに、オーロラパブリッシング(宙出版のアメリカ法人)があります。今年も凸版印刷のブースに、英訳された同社の作品が華やかに展示されていました。自社作品だけでなく、日本の中小出版社のコンテンツも幅広く集めて北米に進出し、少女マンガやサブカルチャーをメインに徐々にそのブランドを築きつつあります。出版社の海外進出には常に様々な困難が伴いますが、毎年着実に前進している同社のチャレンジ精神にはいつも敬意を抱いております。 さて、版権売買を主体としたフランクフルトブックフェアでは依然として英語書籍が幅を利かせていますが、私達JWH同様、各国でも様々な取り組みを始めたようです。例えばフランクフルトブックフェアを開催しているお膝元のドイツ。日本のように、版権売買に関しては輸入超過であり、うち約60%は英語圏からの作品で占められていて、逆にドイツから英語圏に出て行くものは微々たる数に過ぎません。この現状にドイツ政府も危機感を募らせ、ゲーテ財団の支援をうけて英語圏に向けたドイツ文学のプロモーションが始まっています。15ページほどの英語訳をつけ、主にドイツの現代小説を世界に向けて紹介しようとしています。 http://www.litrix.de/home/enindex.htm 一方、海外に目を向けることの少ないアメリカでも、国内向け翻訳書が少ない現状を憂えて海外文学を自国に紹介するWords Without Bordersというサイトが登場しました。毎月様々な言語圏の文学をテーマごとに設定し、エージェントや編集者向けに一部英訳して紹介しています。英米の出版関係者からはたいそう好評のようで、毎月約2万件の閲覧があるそうです。 http://www.wordswithoutborders.org ここの編集責任者でもあるSusan Harris氏ともお会いしたのですが、嬉しいことにJWHの作品を掲載してもらえる可能性が出てきました。過去に芥川賞の候補にもなった短編集なのですが、掲載されるとかなりの注目を集めることが予想され、英語圏での翻訳出版がおそらく実現するのではないかと思われます。これまでにJWHの作品は様々な国に翻訳されていますが、今でも英語圏での出版へのハードルがもっとも高いことは確かです。このWords Without Bordersが、英語圏における出版活動に風穴をあけることを願っています。 さて、東京に帰ってくると駅のキヨスクでニューズウィーク10月17日号が売り出されていたので手にとってみました。『世界が尊敬する日本人100人』という特集が組まれていましたが、そこにはJWH会員のSINCOさんがフィーチャーされ、写真付で記事が掲載されているではありませんか。「新聞の紙面を丸々1ページ割いてもらえる作家は、そういない。しかしイギリスのデーリー・メール紙は、SINCO(シンコ)ことナガクボノブコと「フリースドッグ」にキラリと光るものを感じたようだ。」と紹介されています。思えば2年前のフランクフルトブックフェアでイギリスの出版社に出版を決めていただいたのがきっかけでした。日本の作品のレベルの高さが実証され、英語圏をはじめ世界中で多くのファンを獲得するに至っています。あまりの嬉しさに、旅の疲れも一瞬にして吹き飛んでしまったことは言うまでもありません。 (近) | |
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