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    25e Salon du Livre

    Paris Expo Porte de Versailles !
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フランス国内最大の書籍見本市「パリ・ブックフェアー」が、パリの中心街にある見本市会場「ポルト・ドゥ・ベルサイユ」で3月18日(金)から23日(水)まで開催されました。
パリらしい古い建物とは異なり700平方メートルの広さを誇る近代的な広いエキスポ会場には、フランス出版社最大手のアシェットやガリマール、フラマリオン、アルバン・ミシェルなど大きなブースからフランスの海外領土であるタヒチやニューカレドニアからの小規模出版社まで、その数およそ1300ブースにも上りました。

今年で25回目を迎える同見本市は、日曜日ともあってプレス・出版関係者はもちろん読書愛好家など多くの人出でにぎわい、床に座って小さな子供に絵本を読んであげる姿などもあちこちで見られ、新聞やTVでも初日の様子を扱っていました。


              

パリ・ブックフェアーの今年の招待国はロシア。ロシア語が飛び交うブースでは、ロシア現代文学はもちろん宗教文学から詩、児童文学、ロシア語学習教材にいたるまで数多く展示されていました。ロシア文学はフランスの年間書籍発行部数の16%を占めており、その人気を反映してかロシア人作家の講演会やサイン会には多くの人が行列を作っていました。
今年2005年は『ドン・キホーテ』第1巻が刊行されてから400年。これを記念して3日間に渡って「ドン・キホーテ読書マラソン」と題した読書会があり、子供たちの元気な声が聞こえてきました。またフランスの科学・冒険小説家ジュル・ヴェルヌ(1828-1905)の没後100年に当たり、作品の詳細や現代小説への影響などを説明したパネルも展示。ル・モンド紙やリベラシオンなど新聞各紙が無料配布していたブックフェアー特別版でもジュル・ベルヌは大きく取り上げられ、彼の作品の偉大さを改めて認識しました。

                    

会場奥にはドイツ、カナダ、ブラジル、アルジェリア、ハンガリーなど世界からの出版社連盟ブースも30ほどありました。アジアからは中国と今年フランクフルト・ブックフェアー招待国となっている韓国が出展し、アルファベットとは一味違う漢字やハングル文字に多くの人々が魅了されていました。日本ブースがなかったのは少し残念でしたが、日本の書籍は個別のブースで扱う必要のないほどすでにフランス出版界に浸透していることを反映していたのかもしれません。

シャンゼリゼに店舗を持つヴァージン・メガストアのカタログは「アジアン・カルチャー」と題して、ドラゴンボール、クレヨンしんちゃん、名探偵コナンなどのMANGAやキタノ映画のDVDから村上春樹の小説、俳句集まで、さらには日本語会話集、折り紙マニュアルなどをまとめて扱っています。そのジャンルの多様さにはこちらも圧倒されてしまいましたが、フランス人がMANGAの枠を超えて、日本の小説、詩、習慣そして日本語自体にも興味を持ち始めたと言えます。これも多文化主義が浸透してきているフランスだからこそ日本のような遠い「異国」でも柔軟に受け入れることができるのかもしれません。

                    

出版社のブースで目立っていたのは、実用書の書籍を5冊以上シリーズ化したものです。ガーデニングシリーズなどでは栽培する植物ごとに一冊を当て、たとえば「サボテン」の栽培方法を写真で説明するなど、実用書としてはかなり「専門化」が進んでいるような印象を受けました。しかし写真があまりにも美しいので、何もわからない私でも思わず手にとって買いたくなってしまうほどです。

児童書でもやはり10冊以上のシリーズが多く見受けられました。本の形にもこだわり今までの四角から動物の形にするなどの変化も見られ、子供は本を開く前から本の主人公を楽しんでいるようでした。面白い本として目を引いたのは、子供でも自然や科学さらには哲学・心理学を“自分で学べるように”と本の中の「博士」と一緒に学習できる本、また人種差別や戦争など否定的な事象を学び解決しようとする書籍(タイトルもそのまま「人種差別ってどうしたらなくなるの?」など)もあり、フランス人の問題に取り組む真摯な姿勢とともにフランスの出版文化の豊かさを感じました。

                    

自己啓発書では「中国の思想」「アフリカの伝説」など12冊を一つのコレクションとして扱っているものもあり、全集を揃えたくなってしまいます。こうしたシリーズでは本の内容はもちろんのこと本の形式(表紙を含めた写真の美しさ、優れたデザイン等)に特徴があるのでふと惹かれてしまうようです。

                        

フランスの「今」を反映した多彩な書籍に出会うことができた今年のパリ・ブックフェアー。今頃多くのフランス人がこの会場で出会った本をそれぞれ楽しんでいるに違いありません。

                     パリ・ブックフェアー レポーター  玉置祐子 (フランス在住翻訳者)
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