第22回 カディス・ブックフェア 2007 開催!
22 Edición Feria del Libro de Cádiz 07
4 al 13 Mayo



カディスはスペイン南部アンダルシアに位置する港湾都市。前10世紀ごろ地中海交易をしていたフェニキア人が生んだ町とされ「カディス」はフェニキア語「ガディール」(城壁、砦)が由来という。同地はまた19世紀初頭スペイン初の国民議会が生まれたところでもあり身分制社会を撤廃する1812年憲法が制定された(これはカディス憲法と呼ばれている)。19世紀の自由主義的な気風から生まれたブルジョワ風のマンションと海に囲まれリゾートを思わせるヤシの木のコンビネーションが特徴的だ。

                 

そのカディス旧市街・海側のバルアルテ・デラ・カンデラリアで5月4日から9日間に渡りカディス・ブックフェアが開催された。会場はもともと17世紀半ばに建設された要塞を現代風に改築したところ。室内スタンドの窓から見える風景は真っ青な海!四方を海に囲まれたカディスらしいブックフェアとなった。

                     

実はブックフェアといっても、行ってみたらボローニャやパリ・モントレイユのように出版社のスタンドではなくカディス旧市街の書店のスタンドが多く並んでいた。フランクフルトやボローニャなど世界で重要なブックフェアでは業界関係者でないと入場できず(名刺など何らかの証明が必要)、ボローニャでは場内で書籍を購入することもできない。ブックフェアのスタンドで書籍を購入すればすべて10%引(書店では通常価格)ということもあって訪問客の多くは灰色のスーツを着た業界関係者でなく一般読者だった。「敷居の高い」他のブックフェアとは異なりカディスでは「読者向け」のアットホームな雰囲気が漂っていた。

                         

スペインの書店に並ぶのはその多くが翻訳書である。英語はもちろんだがお隣りが文化大国フランスというだけあってフランスからの翻訳書も多数占めている。ラルース社の実用書や児童書なども人気の一つだ。もちろん、ピクサーの映画「カーズ」やディズニー「カリブの海賊」のぬり絵タイプの絵本のようなアクティビティ・ブックも多数あった。

このブックフェアがカディスらしいと言えば地元の歴史を扱った書籍の多さだ。例えばカディス旧市街から車で20分の町チクラナ・デ・ラ・フロンテーラ。この町の歴史や地元で有名なフラメンコ・ダンサーの伝記まで多数置いてあった。主にドイツ人、イギリス人など観光客向けということもあるが「地元の人が地元の歴史に興味がある」ことを示しているのかもしれない。



カディスはセビリア、コルドバ、グラナダまで日本人観光客のみどころが集まるアンダルシア地方の一都市。そのアンダルシアを扱った本となればより種類も多くなる。イスラム教徒の侵攻に始まりキリスト教徒の領土奪回まで、複雑だが見どころの多いアンダルシアの歴史を扱った分厚い歴史書はたくさんあった。さらにアンダルシアの庭園からタパスを中心とするアンダルシア料理のレシピ集、フラメンコなど、ジャンルもいろいろである。

もちろん読書愛好家にはたまらない「作家サイン会」も毎日行われていた。その1人カルメン・ポサーダスはウルグアイ生まれ、ロンドン育ちの人気作家。俗語使いと現代風刺で人気があり、英語でも二冊小説を出している(ランダムハウス)。邦訳はまだ一冊も出ていないが、いずれ彼女の作品も日本語で楽しめるようになるかもしれない。

                               

カディスの人口は13万人。パリやロンドンの人口とは桁違いの差がある。ブックフェアの規模はその差を反映して幾分こじんまりしていた。それでも「本」の本質的な存在意義は出版社が儲かることよりも読者が楽しむことだと考えれば、読者の願いが叶えられるようなちょうどよいサイズのブックフェアだと言えるのかもしれない。


**** 取材・インタビュー****
スペイン在住 TranNet会員 玉置祐子

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