南半球に位置するオーストラリアでは、真夏の太陽がふりそ
そぐ1月末に新学年が始まる。新しい先生や友だちに慣れ始
めた3月、今年小学一年生になる娘が“Premier’s Reading
Challenge”のお知らせをもらって来た。
小中学生の読書マラソン Premier's Reading Challenge 2005
これは小、中学生対象に、NSW州知事が主催している「読書マラソン」で、推薦 図書の中から決められた冊数を期間中に読了すると賞状が贈られる。学年別に4つのグループに分かれていて、参加者も年々増えているという。娘にとっては初めての参加、親としても興味津々、親子一緒にはりきって走り始めた。
一番年少のグループはkindergartenから小学2年生(オーストラリアでは日本の幼稚園年長組がKindergarten と呼ばれるクラスに当たり、義務教育に含まれていて校舎も小学校に付属している)。シドニーではKindergartenに入学してまもなく、毎日Home Reader(ホームリーダー)という8ページほどの本を読む宿題を出す学校が多い。まず写真や挿絵の入った単語のみの本から始め、個人の能力に合わせて徐々にレベルを上げていく。この毎日の積み重ねのおかげで、一年後には”The Very Hungry Caterpillar” (『はらぺこあおむし』)をひとりで読めるようにまで上達する生徒もいる。勿論個人差があるので、自分で本を読むことがまだ難しい生徒は、親やきょうだいと一緒に読んだり(shared reading)、保護者が読み聞かせてもよいことになっていて、親子一緒に40冊読了に挑戦することもできる。
2005年度オーストラリア児童図書賞候補作品が紹介されているコーナー。
推薦図書リストには380冊以上の絵本が紹介され、オーストラリア人作家では日本でも知られているメム・フォックスを始め、パメラ・アレン、アリソン・レスター、他にはマーガレット・ワイルド、エリック・カールの作品などもある。この推薦図書リストは読書マラソンに限らず、書店に並ぶ膨大な数の本の中からどれを選んだらよいか迷う親のための良いガイド役にもなってくれる。
次のグループ、小学3、4年生の読了目標冊数は20冊で、推薦図書から最低15冊、残りの5冊は同レベルの本なら自由に選んでよい。推薦図書リストのサイトでは冒険もの、ファンタジー、歴史、クラシック、ユーモア、スポーツ、SF、ノンフィクションなど、ジャンル別に検索ができるので、生徒は興味のある本を容易に選べる。スクールマガジンというウェブサイト上の選集もリストに含まれており、その中には日本の「忠犬ハチ公」の話も掲載されていた。
小学5、6年生になると、『ロビンフッド』、『足長おじさん』、
『ハイジ』、『赤毛のアン』『星の王子様』などのクラシックをは
じめ、『ハリーポッター』シリーズや、オーストラリア人作家エミ
リー・ロッダの『デルトラ・クエスト』シリーズも紹介されている。
7、8年生(日本の中学1、2年生)の推薦図書リストは5、6年
生と重複するものも含めると800冊を超え、オーストラリア人
作家によるものが全体の約6割を占めている。「読書マラソン
は、生徒がオーストラリアに住む先住民アボリジニや、環境、
歴史、多民族文化社会の問題などに関心を持ち、視野を広
げるよいきっかけになっている」 という教師のコメントが、新聞
に寄せられていた。
工夫を凝らした読み聞かせで、子どもたちの注意をひきつける図書館員さん
。
子どもに読書好きになってもらいたいと望む親の気持ちは、世界中どこでも変わらないと思う。子どもが本に興味を持つうえで、州や学校からの働きかけはもちろん、読書に親しむ親の姿を見て育つことも大きな鍵を握っているのではないだろうか。親子が一緒に「読書マラソン」を実行できたら、子どもは親との共通の楽しみを通して、自然に本を開く習慣を身につけることだろう。
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□■□■□■□ 海外レポート □■□■□■□
”シドニー発 子どもたちの読書事情 ”『 小中学生の読書マラソン 』
の取り組みを紹介
<<取材・インタビュー>>
シドニー在住 TranNet 会員 鎌田裕子
1991年来豪、自然の美しさと多文化社会の
面白さに魅せられる。
日本語教師や通訳を務め
ながら、オーストラリア人作家の優れた
作品を日本の読者に届けることを目標に、現在翻訳修行中。
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