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漫画やアニメなど日本発のコンテンツが海外で注目を集め
るなか、最近日本ではお目にかかれなくなった「紙芝居」が
米国の教育現場にゆっくりと浸透しつつある。
ニューヨークを拠点に英訳つき紙芝居の紹介活動を行なう団体“Kamishibai For Kids”(以下KFK)。1992年、元教員のマーガレット・アイゼンスタットさんが、学生時代の友人であるダナ・タマキさんと立ち上げた。全米の図書館員や教育関係者を対象にしたコンフェレンスへの出展や、講演、ワークショップなどを通じて「紙芝居」文化の普及に努めてきた。“Momotaro, the Peach Boy(桃太郎)”、“The Tongue-Cut Sparrow(舌きり雀)”、“The Bamboo Princess(かぐや姫)”、“The One-Inch Boy(一寸法師)”―― マーガレットさんのホームオフィスには、英訳版の紙芝居が壁沿いの棚いっぱいに整頓されている。現在、全米各州の学校、図書館を中心に約30種類の作品を提供する。
Kamishibai For Kids「子供のための紙芝居」
マーガレットさんが紙芝居に出合ったのは1969年。空軍に勤めていたご主人の勤務先だった北海道稚内に滞在し、軍施設内の幼稚園で教えていた頃だ。紙芝居という言葉すら知らなかったが、週1回訪れる日本文化担当の先生から紹介されて英訳つきの『龍の目の涙』を教室で読んでみせた。「びっくりしました。何をしても10分と黙っていない子供たちが紙芝居を始めた途端、物語にのめりこんでしまって…」。紙芝居となると、どの作品を見せても子供たちは脇目もふらずに聞き入った。
すっかり物語に引き込まれる子供たち。展開に合わせて体を動かしたり 「やった!」「頑張れ」などと歓声を上げる。
米国へ帰国後、ニューヨークの学校で日本から持ってきた紙芝居を試してみると…、「やっぱり同じでした。いろんな人種の混じる公立校でも厳格な私立校でも、みんな夢中になりました」。特に日本文化と接触もなく育ったような子供たちが、紙芝居を一緒に見ることで好きな場面について熱心に語り合ったり、普段は人種ごとに固まってしまう教室が一つになる様子に感激した。「まるで魔法。紙芝居にはすばらしい力があると確信しました」。
次第に周りの教員たちからも「貸してほしい」「うちの教室でやって」、とリクエストが集まるようになった。「米国の教育現場でもっと気軽に紙芝居が活用できるようになれば」との思いが、KFK創立へつながったのである。
外国の教材の使用に不慣れな教員のため、KFKはカタログや教員ガイドを作成し、紙芝居の歴史や使い方、各作品の要約やグループ・アクティビティのヒント、また物語に描かれる日本の食べ物や習慣などを解説する。紙芝居用具としては、ステージ、拍子木、日本の童謡を集めたCDなども揃え、演劇・音楽教育への活用も勧めている。
現在KFKが提供する英訳つき紙芝居は約30点(各作品には日本語も併記されている)。 ホームオフィスにはカラフルなケースに入った英語版紙芝居がずらりと並ぶ。
マーガレットさんいわく、「紙芝居の魅力は数え切れません」。まず、硬い理論や説明抜きで、自然な形で子供に異文化に触れ、学ぶ機会を与えられるところが素晴らしいという。実際、子供たちが紙芝居をきっかけに日本に興味を持ったり、自ら作品を作りたがるケースは数え切れない。毎回、読み手が聞き手に合わせて声量やペースを自在に調節し、ライブ感を実現できるのも絵本にはない魅力だ。
さらに、日本の童話には、子供に伝えたい教訓やテーマが込められている点も評価されている。『桃太郎』からは協力と責任感、『やまんば』は冒険と勇気、『傘地蔵』は思いやり…などなど、「道徳観について考えさせ教えてくれる貴重な媒体」なのだ。さらに紙芝居は読解力や想像力を養う教材としてはもちろん、英語を第二言語とする学生の訓練や、子供の心理カウンセリングに使われることもあるという。
「北海道で紙芝居を教えてくれた先生には一生感謝します」と話すマーガレットさんは、これまでの活動を通して交流した子供たちから届いた手作り紙芝居を大切に保管している。「私が偶然出合った紙芝居は日本からの素晴らしい贈り物。米国の子供たちにも、もっともっとわけてあげたい」。
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※海外レポート
”紙芝居が子供達に大人気 ”
『 米国教育現場に浸透 』
KFK代表アイゼンシュタット
さんの取り組みを紹介
<<取材・インタビュー>>
NY在住 TranNet 会員
翻訳者 明浦綾子
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